歌集 『時の孔雀』  尾崎まゆみ

c0073633_20471448.jpg
『時の孔雀』より、こころの動くままに引用。装幀は間村俊一。(何か、写真、ピン甘……。)



真水とはかなしき響き注がれてゆくいとしさをせめて飲みほす

こよひまたこでやあらむに醒めぎはの夢浅くたましひが入らぬ

ラベンダーためらふなかれ折り曲げて汝(なれ)のからだを湯にひたすこと

胡桃打ち合はす旋律(メロディー)襟首の白いところに響く骨ある

地はうめきたいのだらうか真夜中になゐ来たりまた嗚呼といふ声

沈丁花からのくらやみ目隠しの鬼の両てのひらにつかまる

燕号折る指先のためらひに紙飛行機の中心のずれ

照りわたる八街ゆけば街ゆけば小手毬の花びらのこまやか

ひいやりと桜いのちの花びらの目のうるほひのやうに紋白蝶(もんしろ)



『時の孔雀』には、「北冬+ 2004年春星号」に掲載された「真玉ゆらぎの」の一連も収載されている。
(よろしければ→こちらをご参照下さい)
わたしはこの、アンデルセンの「人魚姫」にもとづく連作が本当に好きだ。たとえて言えば「姉からもらった真珠のネックレス」のように。
歌集に収められた連作は、初出からは少し推敲されたかたちになっている。短歌としては、歌集に収められたものが完成版ということになる。ただ、わたしは「北冬+」の見開き1ページで読んだ印象がとても強かったので、この一連だけに限っては最初のかたちの方が、ええなあ、好きやなあ、と思う。

潮の香の青くこぼれて鈴なりのいのちの粒がびつしりとある  尾崎まゆみ
by konohana-bunko | 2009-05-07 20:47 | 日乗 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
プロフィールを見る
画像一覧