星の木を聴く守宮たち

c0073633_11271187.jpg
森の奥にその木はあった。雪の季節に目立たない花が咲き、春には棘のある実が成った。しぶくて硬くて鳥も獣も食べない実。この実は夜になると青く光った。
あたたかくなると木の下に守宮がやって来た。光に集まる小さな虫を食べるために。蝙蝠も来た。太った蛾も来た。羽から粉をこぼしながら、実の周りをくるくる回った。
ある夜子供がやって来た。本にしかこころを開かない子供だった。ここでなら夜遅くまで、誰にも邪魔されずに本を読めると思ったからだ。だが小さな虫が多いのにたまりかねて、木の実をひとつだけとって家に持ち帰った。朝になると木の実は石になっていた。
by konohana-bunko | 2005-03-17 11:27 | 空中底辺 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
プロフィールを見る
画像一覧