老婆の仕事

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老婆がいた。老婆は一本の木を持っていた。毎日実のなる木だった。老婆が愚痴をこぼすと酸い実がなった。不平を言うと赤い実がなった。怒ると氷砂糖のような、硬くて甘い実がなった。鳥が来て実を食べた。近所の子供が実を盗みに来た。老婆はそのたびに憤り、箒を振って追い払った。どんなにたくさん実がなっても、老婆は決して人に分けてやらなかった。どうして人にやらねばならないだろう。わたしはひとりぼっちで、財産といえばこの木だけなのに。夜になると老婆は嘆いた。ありとあらゆることを嘆いた。嘆くと木に柔らかい実がなり、すぐに腐って地面に落ちた。夜が明ける前に種から芽が出た。毎朝、老婆は木の下を掃除した。抜いても抜いても双葉が生えていた。
Commented by gogejaval at 2005-03-24 22:32
こんばんは。わたしのページにも来てくださったんですね、ありがとうございます♪語彙が少なくて、文法もあやしいので、なかなか思うように作れないです、短歌。難しい・・・。konohanaさんの短歌、アップされるの楽しみにしてます。

このお話、とっても好きです。一文一文が短くて、無駄な言葉がなくて、想像をかきたてられる素敵なお話ですね。下の物語も好きです。
暗闇できらきら光っているものを見たような、読後感でした。
またおじゃましにきます。
Commented by konohana-bunko at 2005-03-25 20:47
gogejavalさま
気に入っていただけてうれしいです。ありがとうございます。
by konohana-bunko | 2005-03-17 17:54 | 空中底辺 | Comments(2)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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