『われらみな神話の住人』 笹原玉子
2009年 08月 23日
晴雨 うつくしきひと顔をあげよこのままにして朝はくるもの
ここはくにざかひなので午下がりには影のないひとも通ります
みどりにはみどりの理由いつだつて春のあやまちは夏になること
秋日和きみとふたりでする焚火まるでほんたうの人生みたい
空の星かぞへるために十指につづくゆびがいります恋人よ
私はかつて霧函になんでも飼つてゐた。羊も羊のコートの人も。
透きとほる耳もつものは森へゆけ虫が翅たたむ音ひらく音
持つてゐますか? 前髪がみな風に切らるる額(ぬか)といふこの岸辺
大空の鍵盤に黒鍵はなし天使とは長調のかなしみ
骨組みのいとやはらかき身をもてばみんなみの風、風の一枚
ほの昏き昭和の森でちちははと川の字になり寝ねし日々あり
たどりつく岸辺はしらねどわたしたち川の字に寝る。遠くまでゆく