『阿部完市』 [花神現代俳句]10 花神社

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9月のはじめ、所用があって奈良へ出掛けたので、いそいそとフジケイ堂もちいどの店、智林堂さんに寄る。フジケイ堂さんでは塚本邦雄『國語精粋記』、古井由吉『長い町の眠り』を、智林堂さんでこの阿部完市を買った。現代俳人の句集を買うのは久し振り。

以下引用。

サイダーや沈没船の中の昼  (『無帽』)

白菜やところどころに人の恩  (『証』)

雲の色の象育て父空にいる  (『絵本の空』)

栃木にいろいろ雨のたましいもいたり  (『にもつは絵馬』)

かなかなのころされにいくものがたり

にもつは絵馬風の品川すぎている

きつねこころをまつさかさまにしてうらら  (『春日朝歌』)

雲の日のすぺいんのあの大胡蝶

香港の紐屋にあうまでねむられぬ  (『軽のやまめ』)

はなれきて砂糖壺には雪いれて

鱈食べているさんたまりやさまかな

いたりやのふいれんつえ遠しとんぼつり  (『その後の・集』)

引用終わり。わかりやすい、面白いといえば面白い。中でも「栃木にいろいろ――」「にもつは絵馬――」は、(俳句はよくわからないなりに)すごくいいんじゃないかと思う。
よく見ると季語のない句も多い。わたしは「よく見ないと気付かない」程度に季語に鈍感なので、その点に関しては抵抗がなかった。でも

白木蓮に酒をのませてぴーよぴーよ  (『軽のやまめ』)

と言われると、う~ん、木蓮の木にヒヨドリでも来ていたのか?しかし句としてこれでいいのか?とちょっと首をひねってしまった。



『國語精粋記』は講談社刊、政田岑生装幀。銅版画の装画がうつくしいだけに、カバーの状態の悪さが惜しい。持って帰って値札シールをはがそうとしたら、紙がもろいのと、シールの糊がきつかったのと両方で、さらにべりべりに傷めてしまった。あーあ。
Commented by 敬一 at 2009-09-22 18:46 x
阿部完市が亡くなったのは、今年の2月だったか。YouTubeに朗読している阿部完市の動画がありました。URLを入れるとspamコメントと判定されるようなので入れませんけど、いやあ、すごい句がどんどん出てくるなあ。

こういう、口語や散文的要素も取り入れたかなり突拍子もない印象 :-) の俳句というのは、評価がむずかしいところですけど、その姿勢は正しいだろうとわたしは思っています。定型、季語、文語旧仮名遣い、と、こういう、いわゆる伝統俳句といわれるものを踏まえた上での、現代俳句としての拡張ですね。なんでもやってみればいいんですよ。あとは作品の評価を待てばいい。俳句なんていう短い詩は、出したらあとは作品がひとり歩き、です。

最後に引用された句はわたしも「う~ん」ではありますが、でも、作ってみた、という姿勢は評価しておきたい。

現代俳句協会が編集を手がけたり、それに近いスタンスで編集されてる俳句歳時記には「無季(キーワード)」なんて部があります。
Commented by konohana-bunko at 2009-09-23 20:50
敬一さま コメントありがとうございます。「無季」の部立てもあるのですね。この本の解説に「季語のかわりに地名が働いている」という意の文章があって、なるほど、それも面白い、と思いました。
阿部さんは精神科医だったのですね。巻末の略年譜に「昭和三十四年 この頃、LSD服用、症状を自己観察、同時に作句」とありました。
Commented by 敬一 at 2009-09-24 19:38 x
本の扱いに関しては、あろりさんが本職ですから釈迦に説法ですが、とりあえず参考までに。

現代俳句歳時記 学研

ハルキ文庫にも同名の俳句歳時記がありkますが、これは学研が出している文庫版。現代俳句協会が編集しています。「冬」と「新年」がまとまって、ほかに「無季」が別冊になった5分冊。さらに、「通季」という概念も持ち込んでいて、さらに季節は月別編集(これは珍しいことではない)。「春」を3月からはじめて3か月区切りにしています。例句もいろいろおもしろい。子どもの俳句もいろいろ出ていたかな。といってもわたしは立ち読みだけでいまだに買っていません。ビンボが悪いんじゃ。

現代歳時記 たちばな出版

この本には思い出があります。元版は成星出版というところが出したもので、内容面では先の「現代俳句歳時記」の「プレ版」という感じ。当時、成星出版まで押しかけてgetしました。流通に乗る直前だったので、おそらく一般読者第1号 :-)

ほかに「ザ・俳句歳時記」などの「ザ」シリーズや「新版・俳句歳時記」あたりで、現代俳句協会に近いところの俳句作品や子どもの俳句に触れることができます。
Commented by 敬一 at 2009-09-24 19:39 x
あー、なんだか誤字が多い。失礼。
Commented by konohana-bunko at 2009-09-30 10:17
敬一さま ご紹介下さり、ありがとうございます。歳時記の読み比べも面白そうですね。
by konohana-bunko | 2009-09-22 11:17 | 読書雑感 | Comments(5)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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