『萩原朔太郎詩集』三好達治編 岩波文庫

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天理のフジケイ堂の均一箱で『萩原朔太郎詩集』(三好達治編/岩波文庫)を見つけて買ってみた。竹が生えたり蛸が足を喰ったり、高校の頃とても気に入って何度も読んでいたので、読み返したらなつかしくなるかと思ったら、意外とあまり親しい感じがしなかった。学生時代よく喋っていた友達と大人になって再会したら、向こうはすっかりわたしのことを忘れていた……というような。
橋の下を、たくさんの水が流れたのだ。何だかかえって、さっぱりした気分になった。

緑色の笛  萩原朔太郎

この黄昏の野原のなかを
耳のながい象たちがぞろりぞろりと歩いてゐる。
黄色い夕月が風にゆらいで
あちこちに帽子のやうな草つぱがひらひらする。
さびしいですか お嬢さん!
ここに小さな笛があつて その音色は澄んだ緑です。
やさしく歌口をお吹きなさい
とうめいなる空にふるへて
あなたの蜃気楼をよびよせなさい
思慕のはるかな海の方から
ひとつの幻像がしだいにちかづいてくるやうな月。
それはくびのない猫のやうで 墓場の草影にふらふらする
いつそこんな悲しい暮景の中で 私は死んでしまひたいのです。お嬢さん!
Commented by つぼ at 2011-03-04 07:34 x
そうそう。私も「詩」と出会ったのは、萩原朔太郎だったのですが、しばらく前に読んだら、少しも感動しないのにびっくりしました。
ところが三好達治のほうは「いいなぁ」と思ったりします。
この記事を読んではじめて気づきました。
この差はなにか。めんどくさいので考えないのですが。
Commented by konohana-bunko at 2011-03-07 11:09
つぼさま そう仰らずに考えてみて下さい。(^^;)
わたしの場合は……今はムードよりも具体を感じたいと思っているからかもしれません。
Commented by つぼ at 2011-03-07 12:39 x
なるほど。あまりにもパセティックな高調子なので、現代人としては、ひいちゃうんでしょうか。
もっとも私なんか、朔太郎の死んだ年齢に来ているので、若者の作った詩にそれほどの感興がわかないのも無理ないかもしれません。
by konohana-bunko | 2011-02-28 21:49 | 読書雑感 | Comments(3)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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