『犬の足あと 猫のひげ』 武田花

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『犬の足あと 猫のひげ』武田花 中公文庫より、以下引用。

《お餅といえば、人に聞いた話がある。その人の田舎では正月にお年始に行くと、どこの家でも必ずお餅を出されるそうだ。Aさんも朝からあちこちの家でご馳走になり、もう満腹になっていた。次に訪ねた家ではどうしても食べられなくて、だけど断っては悪いので、家の人の居ない隙に、餅を縁の下に投げ捨ててしまうことにした。ところが、餅が皿にべったりくっついていたため、勢いあまって皿ごと縁の下に飛んで行ってしまった。で、戻ってきた家の人は、餅ばかりか皿までなくなっているので、驚いた顔をしたそうだ。また別の家に行き、今度はうまく餅だけ外に放り投げられたので、ほっとしたら、そこの飼い犬が庭先にやってきて、その餅を食べ、口のなかにべとべとくっついてしまい、もがき苦しみだした。それで家の人にばれてしまった。
「そんなことするなら、要らないと言えばいいのに」
と言われたそうだが、Aさんはそれができない質なのである。その気持ち、よくわかる。》(p106-107「失敗」より)
by konohana-bunko | 2011-05-31 11:30 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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