過去帳

祖母の犬チェリーは、マスチフに似た茶色の雑種だった。吠えない犬だった。わたしを見るとゆるゆると尾を振った。肋骨の浮き出たた脇腹をよく撫でてやった。その年の冬、チェリーはフィラリアで死んだ。祖母は仏間の襖の隅に命日を書き入れた。襖が過去帳だった。記された犬の名は全てチェリーだった。
by konohana-bunko | 2011-07-17 13:53 | 空中底辺 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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