高橋みずほ 『しろうるり』より

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『しろうるり』より、好きな歌を引用。

靴脱いで裏ながめてる少年と椅子に腰掛けバスを待つ

雨の歩道のひとつ青栗蹴りてみる毬の先にまわりて止まる

なにかわからぬ虫を手の平で鵜chわからぬ形のままゆきぬ

逃げ惑うおたまじゃくしの猛しさに頭のゆれも尾のゆれのなか

あめんぼう水面(みなも)の底に四隅おさえた影すべらせて

黄の傘まわり緑のゆれてたたみつつ戸口につぼむ

立ち上がる波に若布も伸びあがり巻かれて走る砂の浜

思い煩うことも土平らかにして終わらんとす家の跡

カラコロと下駄の坂道おちてゆく西日のなかにカラコロ光

家影が旧道沿いに落ちるころ竿竹売りがゆるゆるとゆく

玄関の戸を開け放ち 布を裂く さき目におどる光の粒子

うさぎの耳が風をつかんで立つ日暮れ草のしずくを嗅ぎわけながら

殻を食むたびにつむじがゆれてゆったりと秋の鹿

牛と牛 小突き合う角つなげられ版画の黒の浮き立つ形

ずるずると屋根落ち軒にたれるゆきはるのしずくとなるまで の

夕暮れの幹をつかむ蝉の殻 わ れ て 声の立つ

生きている人の幅に開きいて椅子はひそかな広がりをもつ

生きてきた木目の幅をみせながらほっとりと椅子が置かれて


歌集『しろうるり』  高橋みずほ  装丁=間村俊一  邑書林(2008)



字足らずはもちろん、大きな印象のひとつ。それについで気付いたのは、一首の前半と後半で主語が変わる(ように読める)歌が時折見受けられること。それは、歌会だと「ねじれている」などと指摘されがちなところなのだけれど、集として読んでいると気にならない。むしろ、ちょっと楽しかったりする。公園の遊具、曲がりくねったトンネルをくぐり抜けて、(あれっ、こっちに出てきたのか)と思う瞬間の、あの妙な気分に似ている。

写真はあわじ花さじきにて。しばらく島の写真、続きます。
by konohana-bunko | 2012-03-26 19:03 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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