梅の実

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石塀の下に梅の実が転がっている。青いのも、黄色く熟したのも。(あ、もったいない)と思う。ここは人が住んでいるのかいないのかもわからない古家。鬱蒼と繁った梅の枝が、低気圧の風に揉まれてぽろぽろ実を落とす。誰にも顧みられなくなってからの方が、たくさん実を付けているのかもしれない。
落ち放題に落ちている青梅の実。もったいないけれどどうすることもできない。でも、もったいないと思うのはわたしの吝嗇な考えなのか。この家の人(がいたとして、その人)は、梅がなろうが何しようがたぶん気にも留めていないのだろう。ひょっとしたら、梅の木自身も、さほど拘っていないのかも。
誰もが多かれ少なかれ、大切なモノだとかコトバだとかを無駄にしながら生きているのだろう。それらがせめて、この青梅の実のようにいい匂いを放ちながら朽ちてゆきますように。あなたが落として気付かなかったもの。わたしが知らず知らずのうちに零してきたもの。誰も取りに来ない、泉の底の鉄の斧も。
by konohana-bunko | 2012-06-13 20:15 | 空中底辺 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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