柿の木

病院に面会に行く。母がエレベーターで病室から降りて来る。扉が開いて母と目が合ったら、もうその時点で、機嫌がいいのか悪いのかわかる。顔だけ見ればそんでええというような面会。会話はする。話は噛み合わないが、噛み合わなければならないというものでもない。噛み合わない方が平和でよろしいという意見も成り立つ。
母がわたしの従妹の名前を出す。その従妹が母の実家に住んでいると言う。それはまず、あり得ないことなのだけれど、逆らう必要もないから、
へえ、そうなん。
といい加減な返事をすると、
「柿の木があったでしょう!あの家よ」と、窘められた。
ああ、あったな、柿の木。
母もまだ覚えていたのか。と思うと、ちょっと目を見開きたくなった。
具体にまつわる記憶というのは強いのかもしれない。そんなことを思いながら帰宅。
by konohana-bunko | 2012-07-19 21:26 | 日乗 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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