『王のテラス』 寺島博子

寺島博子歌集『王のテラス』(ながらみ書房)より、以下引用。

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赤き実に帰天のこころ黒き実に堕天のこころふたつ寄りそふ

相呼ぶといふやさしみを秋は見すひかりが風を風が記憶を

また来いと言ふ声を風に聞く耳に苦しめられむこの先長く

そのむかし身罷りたるもゆめになほ騒ぐもうぢき春ぢや春ぢやと

落雁をのせれば舌に一羽二羽とろけてゆくも音しめやかに

みづうすく張られたる空に水紋を広げながらにさへづる一羽

白き象を普賢菩薩に拝借しひとまはりせぬ初秋の街を

ワンピースの背中を割りてあらはるる翅をもたざるむすめのからだ

何ものの命かわれに添ふとさへ思へてならぬ日暮れの風に

こほろぎの一匹を胸の奥に飼ひときに畳に出だして鳴かす

なにがしかの覚悟そなはる出刃をもて寒の厨に魚を捌くに
by konohana-bunko | 2012-09-07 20:25 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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