空白

住宅街の午前十時は、二頁目から何も書かれていない日記帳の空白に似ている。風は金木犀の匂いを運び、自転車の籠は路上に竪琴のような影を落とす。ベランダに干された布団が、あかんべえをする舌のように垂れている。団地のどこかでピアニカの音がして、止んだ。誰かまだ、いたのか。この空白の街に。
by konohana-bunko | 2012-10-20 20:10 | 空中底辺 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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