日高堯子歌集 『雲の塔』

日高堯子歌集 『雲の塔』 (角川書店 2011)より、好きな歌を気の向くままに、以下引用。


たまごの殻おもとの鉢にならべつつふと夢を見ぬ身体にぬくく

顔半分ひかりのなかに消えながらとら猫きたり秋のくさむら

春疾風 不忍池を吹きぬけてわたあめを、顔を一瞬に消す

なかへちへ入る田辺は口熊野 春のきのこが白傘たてて

岸辺には犬が待ちをり雌犬なり乳房に斑あり母かもしれぬ

坊主めくり母とする日のひだまりの赤いざぶとん黒いざぶとん

胎蔵界曼荼羅いでてゆふやけの春の畑に葱とりにゆく

雨あがりの茸のやうにぬきぬきとならぶ力士らももいろの四股

八房に懸想されたる伏姫の顔すでに犬、犬のさびしさ

いただきにキザキザ三つゑがきたるわが幼日の富士山かなし

去年の破魔矢火に投げこめばもえあがる刹那すずしき鈴なりにけり

白間津から忽戸まで花の道5kmきんせんくわたんたん、すとつくぽうぽう

水神家 菅生家 天羽家 みな美しき姓なれど今日の葬の立て札

をちこちに蜜蜂の巣箱がおかれゐて柩のやうだ春のげんげ野

老い母に顔よせ父がなにか問ふベッドのめぐり夜の蛾、羽虫
by konohana-bunko | 2012-11-18 23:27 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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