『人生は愉快だ』 池田晶子

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『人生は愉快だ』 池田晶子 (2008、毎日新聞社)所収、「言葉はそれ自体が価値である」より、以下引用。池田さん細切れにしちゃってすんません。

《本には値段がついている。本は商品である。それなら、言葉にも値段がつくのだろうか。言葉は一般商品なのだろうか。》

《「でも売れなければしょうがないでしょ」と、人は言う。なぜ売れなければしょうがないのだろうか。
この問いをもまた彼らは所有していない。生活のため、生存のため、すなわち生きるためには売れなければしょうがないということらしい。それなら、なぜ生きるためにわざわざ言葉の仕事を生業として選ぶ必要があったのだろうか。》

《値段は価値ではない。逆に、言葉に値段がつくと思うそれがその人の生の価値だ。だから、安い言葉を大量に売り飛ばして平気なのである。》

《私は、安い言葉を売り飛ばすくらいなら、言葉の仕事など選ばない。それは自分が安い人間になることに他ならないからである。安い人間になってまで生きている理由など、少なくとも私には存在しない。
なんてことばっかり書いているから、私の本は、決して「売れない」。生きるか死ぬか覚悟を決めな、なんて言葉を、普通の人は欲さないのである。編集者たちだってわざわざ火中の栗を拾うようなことをしなくたって、安全な書き手は他にいくらでもいる。
だからこそ、私は言葉を書いている。かくも愚劣な言論出版界だからこそ、正しく価値のある言葉を書くことに価値があるのである。そして、正しく価値のある言葉は、正しく価値のある読者には、必ず届くことになっている。我々にとって本質的価値は不動だからである。
決して「売れて」はいないけれども、確実に「読まれて」いる手応えを、私は感じている。》

引用終わり。
哲学の本はあまり読まないが、池田晶子の本はときどき買う。
引用した文章、そうだそうだその通りだ!と、諸手をあげて賛成するほどの覚悟はわたしにはないのだけれど(その覚悟こそがわたしに最も不足しているものかもしれない)、何かここに、読み飛ばしてしまえない、すごく大事なことが書かれている気がする。特に、最後の三つの文あたり。
by konohana-bunko | 2012-12-06 19:54 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


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