宝交早生

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苺は市場の軒下で売られていた。浅い木箱に無選別の苺が入っていた。値段を太い字で書いたへぎ板が立ててあった。 苺下さい、と言うと、小父さんはプラスチックの板で苺を掬い、茶紙の袋に入れ、秤で重さを量った。(端っこの大きい粒入れてくれへんかな)と期待しながら小父さんの手許を見ていた。 木箱の苺が減ると、底に敷いた新聞紙が露わになった。新聞には苺の果汁が染みていた。柔らかいものが乱雑に扱われる時、無傷で済むものもあればあえなく潰れてしまうものもある。その結果としての赤をいつも、じっと見てしまうのだった。鮮やかさと酷たらしさを同時に感じて恍惚としていたのだった。
by konohana-bunko | 2013-02-15 11:15 | 空中底辺 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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