花桃

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川沿いの空地に野菜を作っているひとところがある。囲いの結わえ方、豆の支柱の立て方など如何にも素人くさく、大した野菜が出来ていそうにもないのだが、いつ見ても草だけはきれいに取ってある。そして、そこここに花を作っている。切花にも出来ないであろうに、何故かパンジーの一畝があったりする。
そして、いかにもその場その場の思いつきで植えてみた風の梅や椿や花蘇芳の木がある。昨日そこを通りがかったら、枝垂れの木に濃い紅色の花が咲き始めている。梅のような梅でないような、と眺めていたら、奥から小父さんが出て来て「それは花桃」と教えてくれた。きれいやろ。実は食べられへんけどな。
畑とも庭ともつかぬ一隅だが、子供の着物みたいに赤い桃が咲き、その下に喇叭水仙が向き向きに咲いている景色には、曰く言い難いうつくしさがあった。花桃は実で増やせると小父さんは言った。もうじきあっちの方に桜桃も咲くで。桜桃の花もな、きれいで。小父さんはそう言って焚火の方に戻っていった。
by konohana-bunko | 2013-03-27 17:31 | 空中底辺 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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