金木犀

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小学校の保健室の窓の前に、金木犀の木があった。とても大きな木だった。今頃の季節になると、たくさん花をつけた。咲いて咲いて、小さい花を地面の上にいっぱい零した。地面が橙色になるくらい。
いい匂いと、きれいな色に魅かれて、女の子は花を拾って遊んだ。手に持って匂いをかいだり、筆箱の中に入れたりした。そのうち誰かが、小さなガラスの壜を持ち込んだ。壜にぽちっと水を入れて、そこに拾った花を入れて、香水を作るのだと言い出した。次の日からみんな真似をして、われもわれもとガラスの壜を学校へ持ってきた。
あのガラス壜は何の壜だったのか。高さ3~4cmで、コルクの蓋がついていた。今でもあるのかどうか知らないが、よくお土産の星砂なんかを入れて売っていた壜だ。みんなが持って来たのだから、割に簡単に手に入った筈だ。お菓子屋かファンシーショップで、スプレーチョコの容器として売っていたのか。あるいは手芸店で、ビーズの容器になっていたのか。
わたしは友達と一緒に花は拾ったが、うちに壜がなかったので香水作りはやらなかった。みんなはわくわくしながら壜を振ったり眺めたりしたが、花がほとびて茶色くなっただけで、香水はできなかった。そうこうしている間に花もすっかり散ってしまった。
金木犀の花を見ていたらそんなことを思い出した。
金木犀の匂いはあくまでも金木犀の匂いで、特に何も思い出さない。だが、金木犀の花の色を見ていると、小児用バファリンの甘苦い味と保健室の薬の匂いを思い出す。
by konohana-bunko | 2005-10-08 22:54 | 空中底辺 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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