三好達治詩集

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写真美術館に行った日、朝倉文庫さんで『三好達治詩集』(旺文社文庫)を買ったのだった。書くのを忘れていた。前に行った時には気が付かなかったのだが、朝倉文庫さんには旺文社文庫の本がたくさんあった。詩集の方は帰りの電車で全部読んでしまった。

 
 
鹿は角に麻縄をしばられて、暗い物置小屋にいれられてゐた。何も見えないところで、その青い眼はすみ、きちんと風雅に坐つてゐた。芋が一つころがつてゐた。

そとでは桜の花が散り、山の方から、ひとすぢそれを自転車がしいていつた。
背中を見せて、少女は藪を眺めてゐた。羽織の肩に、黒いリボンをとめて。

 庭

太陽はまだ暗い倉庫に遮ぎられて、霜の置いた庭は紫いろにひろびろと冷めたい影の底にあつた。その朝私の拾つたものは凍死した一羽の鴉であつた。かたくなな翼を錘(つむ)の形にたたむで、灰色の瞼をとぢてゐた。それを抛(な)げてみると、枯れた芝生に落ちてあつけない音をたてた。近づいて見ると、しづかに血を流してゐた。
晴れてゆく空のどこかから、また鴉の啼くのが聞えた。


  三好達治 「測量船」より (三好達治詩集 村野四郎編 旺文社文庫 1981再)

久し振りに行った奈良公園は修学旅行や遠足のこどもたちでいっぱいで、鹿があまり見られなかった。11月になったらまたゆっくり遊びに行きたい。興福寺の銀杏や浮雲園地の南京櫨ももうすぐ見頃なのではないか。
写真はアメリカフウの木。
Commented by つぼ at 2005-10-29 09:09 x
三好達治はいいですねぇ。カラスの詩もありましたね。初期の詩が好きです。冷たい空気がぴんと張りつめたような。
Commented by konohana-bunko at 2005-10-29 20:22
仰せの作品かどうかわかりませんが、鴉の出てくる詩も写してみました。三好達治はことば遣いが難解でないところがいいと思います。
by konohana-bunko | 2005-10-28 22:22 | 読書雑感 | Comments(2)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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