『短歌学入門』 辰巳正明

『短歌学入門』 辰巳正明_c0073633_22185426.jpg
日本の古典文学については、高校の古文レベルの知識しかない。その記憶ももう、20年以上経過してとうに時効が過ぎている。縁あって歌をやっているのだから時にはこんな本も読まねば、と手に取った次第。
著者は國學院大學教授。結社誌に連載された文章をまとめたものとあって、語り口はやわらかいのだが、これが案外わかりにくい文章だった。興味深かったところを二、三引用してみようとページを繰って見ても、連綿としていてどうもうまく切り抜くことができない。先に取り上げた『レポートの組み立て方』に出ていた話ではないが、どれが調べたことで、どこまでが定説で、著者の考えはずばりどうなのか、それらがどうも曖昧でピントを結ばないのだ。

そんな中でも、面白いトピックスはいくつもあった。以下、乱暴にかいつまんで書き出してみる。
・長歌/短歌の「長・短」はことばの長さではなく声調(曲調)の長短を示していたのではないかということ
・雪月花・花鳥風月を詠むことは漢詩から影響を受けたということ
・短歌の文法の第一は「五七五七七」、第二は「歴史的仮名遣いによる表記」、第三は「文語」、第四は「詠嘆性の助詞・助動詞」。これらは「短歌という方言」である。奄美の島唄がシマ口(奄美の方言)で歌われ、シマ口でなければ成り立たないのと同じである。

文章のわかりにくさの責めを、本にばかり帰することはできない。読み手の読解力にも問題がある。それに、読み手には記紀万葉や日本の上代の歴史などの予備知識も、ない。
(ないからこそ、「入門」ということばに惹かれたのだが…。なかなか、四十の手習いは捗がいかない。)

國學院と言えば、以前読んだ『短歌の謎―近代から現代まで』(学燈者社/國學院編集部)は面白かった。手許にあるはずなのだが、さてどこに隠れているのやら。出てきたら再読します。
by konohana-bunko | 2005-12-07 22:19 | 読書雑感

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり