『当世・商売往来』 別役実

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いろんな商売(職業)のありようをひねりの効いた筆で描いてみました、という本。30種類の商売にまつわる30の短い話だからすぐ読めるようでなかなか前に進めなかった。この別役実の文章の癖というかものの見方(うがち方?)が今のわたしの気分に合わないのかもしれない。
30あるうち素直に楽しめたのは「こえかい」「喫茶店」「銭湯」の3編。

以下、「喫茶店」の章より引用。

百万単位の人類と、千単位の人間は、まったく別種の存在である。千単位の人間を千単位集合させても、百万単位の人類にはならない。それはあくまでも、千単位の人間を千単位集合させたものにほかならない。したがって、人間というものを千単位で考える考え方を、どんなに拡大しても、百万単位の人類について考えることはできない。逆に、百万単位の人類についての考え方を、どんなにきめ細かに細分化したとしても、千単位の人間について考えることはできない。百万単位の人類と、千単位の人間は、それらをそれぞれそのように確かめるための文化が違うのである。
(中略)
それでは、どうすればいいか。これまで都市における喫茶店が、わが国の文化に果してきた役割は、決して小さくはない。当然ながらそれは、千単位の人間に関わる文化であり、百万単位の人類に関わる文化ではなかったが、その種の文化を固守している人間も、もしくはその種の文化しか文化でないと考えている人間も、まだいくらかは生き残っているのである。そうした人間が、せめてほんのひとときでも、百万単位の人類の運命について考えないですむ場所として、一軒や二軒の喫茶店を残しておいてもいいではないか。もちろん、高騰しつつある地価に見合うべく、コーヒーの値段を一万円とか二万円にしてもいいと言うのではない。時間制限があって、「五分たったら出ていけ」というのも困る。「紙コップに入れたコーヒーを、立って飲め」というのもいけない。

引用終わり。

喫茶店が千単位の人間の文化とすれば、現代短歌の歌集は果たして何人単位の文化なのかしら。などと、つい、考えてしまった。
Commented by 88puti-cafe88 at 2005-12-27 21:44
力強い写真ですね p(*゜▽゜*)q!!
ところで、この下のトナカイに、大分笑わされました。
こういうの、好きです。
Commented by konohana-bunko at 2005-12-29 09:34
88puti-cafe88さん、ご来訪ありがとうございます!
トナカイ、お気に召していただけてうれしいです。
by konohana-bunko | 2005-12-25 22:20 | 読書雑感 | Comments(2)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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