『ラインダンス』 井上陽水

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『ラインダンス』 井上陽水 新潮文庫 (1982)

歌詞というのはメロディーや声やリズムの上に乗っているからよく思えるので、どんなに素敵な歌でも、歌詞だけ取り出して「読む」のにはたえられない。日頃そう思っていることもあって、槇原敬之のCDは持っていても、『槇原敬之詩集』は持っていない。槇原敬之の歌詞はいい、と、思いつつ、買わないのである。

そんなわたしがつい、「綿菓子のような頭をした井上陽水の写真」にひかされて読んでしまった『ラインダンス』より以下引用。

  ゼンマイじかけのカブト虫

カブト虫 こわれた
一緒に楽しく遊んでいたのに
幸福に糸つけ
ひきずりまわしていて こわれた

白いシャツ 汚した
いつでも気をつけて着ていたのに
雨あがり嬉しく
飛んだりはねたりして 汚した

青い鳥 逃がした
毎日、毎日唄っていたのに
鳥籠をきれいに
掃除をしている時 逃がした

君の顔 笑った
なんにもおかしい事はないのに
君の目が こわれた
ゼンマイじかけのカブト虫みたい


引用終わり。

実際に読んでみると、歌詞のところどころに見受けられる「どことなく投げやりで舌足らずの言い回し」というのが結構面白かった。たとえば上に引用した「ゼンマイじかけのカブト虫」の「幸福に糸つけ」や「雨あがり嬉しく」というところ。あるいは「ジェラシー」の「ハンドバッグのとめがねが/外れて化粧が散らばる」というところ。こういうのも、「文体」と言えるかもしれない。
by konohana-bunko | 2006-01-15 10:14 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


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