『メタルカラーの時代』 山根一眞

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「メタルカラー」とは、「ホワイトカラー」「ブルーカラー」という概念から著者が発想したことばで、「創造的技術開発者の総称」とのこと。84人の技術開発者へのインタビューが、644ページに2段組みでぎゅぎゅーっと詰まっている。とにかく分厚い。読んでも読んでも終わらない。結局消化するのに1ヶ月近くかかってしまった。
それでも最後まで読むことができたのは、技術開発者たちのインタビューが実に魅力的だったからだ。やっぱり、ひとつことを懸命にやりとげてきた人たちのことばには、重みがある。

思わず「へぇ」と声が出るエピソードもいくつもあった。以下引用。

・アメリカでは、1957年に電波を月に反射させて遠距離通信をしようと実験し、結構通じたようですよ。
(p263)(国際電信電話株式会社 岩崎欣二氏)

・インタビュー場所の東京ヒルトンホテルの窓から眼下に広がる東京の町を眺めながら、加納さんはこういった。「このビル全部が、やがてわれわれの仕事になりますから、未来は明るい」
(p541)(株式会社カコー=建物解体業 発破事業部 加納俊彦氏)

・トンボはね、飛びながら光る水面を視覚で捜しているんです。鏡を置いても産卵しようとしますよ。ですから水槽を用意しておけば、必ず来ます。(中略)トンボに空から水面が見えるようにしておくのがコツですね。
(p555)(財団法人東京動物園協会 矢島稔氏)

・人間は水辺を本能的に好みます。砂浜があり足に水が感じられ、潮風も受けられる、そういう環境はきわめて高価なものだろうと思う。ところが、そういう経済的な価値がちゃんと評価されていないから、安易に削ったり埋め立て地にしてしまったりする。もし自然そのままの渚を作るとしたら、どれほどのコストがかかるかの認識をすべきです。その比較をすると、埋め立て地によって得られる経済価値はきわめて低い。環境問題は、そういう経済価値を知る時代だと思います。(p588)(愛媛大学工学部 柳哲雄氏)

・あのタマゴの殻ってたったの1日でできるんです。ニワトリの卵巣から卵黄が輸卵管へ1日1個ずつポンポンと落ちる。そこに精子がやってきて受精。その24時間後の産卵時には、立派な殻ができている。あの殻はわずか19時間でできる。(p592)(昭和大学歯学部生化学教室 須田立雄氏)
by konohana-bunko | 2006-02-18 22:04 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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