『日本むかしばなし集』(一)~(三) 坪田譲治

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「桃太郎」「花咲か爺」「一寸法師」などはもちろん、落語/山村浩二のアニメ「頭山」と同工異曲の「頭にカキの木」など、3冊合わせて152編のむかしばなしが収録されている。短い話ばかりだからすぐ読めるだろうと思ったのだが、読了まで案外と時間がかかった。ひとつひとつの場面の絵を思い浮かべながら読んだからかもしれない。
一番楽しかったのは「沢右衛門(さわよむ)どんのウナギつり」。沢右衛門さんが捕った大ウナギが山を飛び越え、大イノシシに当たって、それを括って持って帰ろうと蔓を引いたら山芋が抜けて、おまけにキジと卵とイタチまで…とドミノが倒れ続ける、「かもとりごんべえ」みたいな話。荒唐無稽さに胸がほのぼのとしてくる。

坪田譲治の描写で、特にうまいと思ったところ。

山をのぼり、谷をわたりして、山奥のほうへ行っておりますと、谷川の淵のさきに出ました。深い淵です。大きな淵です。そこまで谷川はひじょうないきおいで、まるで競争のように流れてきたのですが、ちょうどその淵の上が滝になっていましたので、水はそこから、まっさかさまに、淵をめがけてとびこむようでした。滝のいきおいといい、それがあげている水のしぶきといい、滝を見た者は、そんな気がするのでした。
 しかし、水は、淵の中に落ち込んでみると、そこの深さと広さにぼんやりして、たくさんの水がぐるりぐるりとうずをまいて流れている方向に、自然にまきこまれていくのでした。だから、その淵は大きく、そして、深かったのです。(p109-110 「米良の上ウルシ」)

こどもの頃に、こういうくだりを布団の中で読んだら、一生記憶のどこかに残るのではないかと思う。

写真は夫が保育園時代に制作した「さるかに合戦」の図。
by konohana-bunko | 2006-04-08 22:06 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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