つち。ほる。みみず。

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四月下旬の某日。
遅い昼食のため、東向商店街のマクドナルドに入って、窓際の席に座った。

ガラス一枚を隔てて、アーケードの下を人がたくさん通る。若いカップル。年配のご夫婦。修学旅行生。犬の散歩の人。携帯で話しているスーツ姿の人。ご婦人のグループは、息を吸っているときもしゃべっているみたい。人と人の合間を、自転車がベルを鳴らしながらすり抜ける。向こうから、佐川急便の台車。そんな人の流れをぼんやり眺めながら、口をもぐもぐさせる。

そのうち、小さい子が目に入った。3歳くらいの、男の子。店の前を、行ったり来たり、ちょろちょろ、ちょこちょこ。

(あれ、小さい子やのに、ひとりかな?)と気になって見ていたら、その子は隣の店の方を、ちらっ、ちらっと覗いては、たたたとこちらへ走ってくる。ここからは見えないけれど、お母さんかお父さんか、連れてきた人は隣で買い物をしている様子。
男の子は、路上に置いてあるソフトクリームの張りぼてが気に入ったらしい。自分の背丈より大きいソフトクリームの、クリームの部分を手で触ったり、叩いたり、コーンの部分に腕を回して、抱きついてみたり。

(あの子、ひょっとして、ソフトクリーム食べたいんかなァ。)

そう思って見ていたら、その子は、とうとう我慢しきれなくなったのか、張りぼてのクリームのところに顔を近づけて、ぺろっ、と舐めた。
(あっ、舐めやった!)
舐めてから、何とも、妙な顔。
(…味、せえへんかったやろ!)

それからすぐ、親に呼ばれたのか、走って行ってしまった。
by konohana-bunko | 2006-05-03 16:10 | 日乗

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり