『風さわぐ かなしむ言葉』 岡部伊都子

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岡部伊都子を最初に読んだのは、中学生の頃、新聞のエッセイでだったと思う。ことばがやわらかく、たおやかなのに対して、自身に対する姿勢が大層きびしいことが、印象に残った。その印象は、今も、どの作品を読んでも、変わらない。

以下引用。

人からうまく打ち明け話をひきだして、好んで聞く趣味の方があるが、私はとてもそんな親切をもてない。どんなことでも、こちらから聞き出そうとは思わない。どんなに仲がよくっても、言わずにすむことならば言わないでもらいたい。「できるだけなにも打ち明けないで」その上でどうしてもきかねばならぬときはもとより、いっしょうけんめいにきく。それは相手が不幸な思いをしているときだ。打ち明けずにすむ幸福を祝福してやまぬだけに、なにかきいてといわれたときには、激しく心がさわぐ。信頼されて打ち明けられるにもせよ、他者の不幸な秘密を知らねばならぬのは、”血で買った”貴重な静寂を失うことだ。そしていつかは「真実を知られた人間だ」という事実のために、打ち明けた人からかえってうとまれる宿命をも覚悟せねばならぬ。内部にふきあれる風の風圧でバラバラに崩壊する自分を感じて呆然とするのである。(p158 風さわぐ より)

写真は近鉄奈良駅、率川(いさがわ)神社「ゆりまつり」の看板。レトロだ。
by konohana-bunko | 2006-06-13 23:30 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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