わたしのすきなうた 2

c0073633_18475362.jpg
うそねっと 1・2・3  佐藤弓生



わらいあう手と手を窓に映しては
紅茶の
紅の
ふかく古りゆく

去年今年貫かれつつ
吐く息の

はるかなるはぐれ雲なれ

夜のパパ――きれい、つめたい、
あたらしい、
ありとあらゆるみぞれをつけて

満天に乳首ちかちかいたむまで
いまぼくたちは
いちめんの生



ひとたびのふたば
のように土つけてくちびる
を割る
わたしのことば

水底の
みどりの草をくしけずる
川に呼ばれてあなたは
来たの

さくらばな盛りあがり来る
胸底にヘリコプターを飼うらし
母は

口中に花はあふれて
女友達との日々は
遠のきすぎて



はなのあなふたつ
ふくらむ
赤ちゃんの
あなたはどこをただよう袋

ここもいつかは海ですか
腰骨を
しずかにしずめゆく
歯科の椅子

虚空から
虚空へわたる鳥として
花火は時のひずみにひらく

まだあたたかく畳の上に
たたまれて
人から布へもどる矢絣

(うそねっと 1・2 「かばん」3月号より/うそねっと 3 「かばん」7月号より引用)

特に好きなのは、1の「わらいあう手と手を」、2の「ひとたびのふたば」、3の「はなのあなふたつ」。ファンタジーの世界が、きちんと身体をくぐり抜けた、持ち重りのすることばで書かれているところがいい。
語割れや句跨りを使ったり、1首を3行分かち書きにしたり、現代短歌はいろんなことをやるけれど、壊せば壊すほど、五七五七七のリズムがたちあらわれてくるように感じる。定型は、しぶとい。五七五七七をより感じたいがために、敢えて壊そうとするのかもしれない。
Commented by やまんね at 2006-07-18 21:31 x
吸い込まれていきたくなるような空ですね~
私は、ひとたびのふたばのように・・の歌が一番好きです。
Commented by konohana-bunko at 2006-07-19 17:45
暑い暑い日に撮った写真です。バスを待っている間、入道雲がもくもく膨らむのを久し振りに見ました。
by konohana-bunko | 2006-07-18 18:48 | 空中底辺 | Comments(2)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
プロフィールを見る
画像一覧