『ピュシス ピュシス』 江田浩司

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著者は「未来」「Es」所属。カバーの絵は「モンゴルの国民的な画家ツェグミドのものである」(あとがきより)とのこと。力があって、いい絵だと思う。実物はもう少し明るい色合い、赤が効いた感じ。

内容について。率直に言うと、難解だった。タイトルの「ピュシス ピュシス」ということばが何を意味するのかも、わからなかった。(何と愚かな読者!)ただ、この集が、限りなく詩に近い位置に立っているのだとすれば、日常とか感情とか、そういうわかりやすい「意味」をこの中に見出さなくてもよいのかもしれない。

イメージを受け止めることができた作品より10首抄出。

闇を叩いて緑の息を深くする 死の鼻先にいる青い象

向日葵の碧(みどり)の海が笑ってる
私から膝を折る
渇き

愚かさのどこかへ
卵ころがりて
祈りのごとく笑みぶら下がる

無意味だと言ってはみても乳の膜 光を乗せて 笑った 笑った

なかぞらにインクの染みがひろがりて風あおあおと魚群すぎたり

寒卵をボールに割れば盲いたる光のごとし 吸われゆくわれ

菜の花にからからと鳴る煙かな 八十八夜恋の兆せり

驢馬ノ眼 夕木霊スル
口中ニ 洪水ノ声
茜サス水

  夢半ば瘋癲院の煙出し
なまぐさき世紀の破瓜を舐めまわす 声あえかなる婚衣泡立ち

  降る雪や妻とう無限の曲がり角
擂り鉢に顔を突っ込みぐるぐると首を回した 妻に見られた


4首目を見つけた時、知らない街の雑踏の中に知り合いの顔を見つけた時のようにうれしくなった。10首目、詞書との掛け合いがいい。

追記。Physis Physis がわからない、と述べたが、先程調べたら「ギリシャ語で森羅万象のこと」と書いてあるサイトがあった。http://gc.sfc.keio.ac.jp/class/2005_14119/slides/10/39.htmlひょっとして、このことだろうか。
by konohana-bunko | 2006-09-04 16:59 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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