うれしかったこと

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5日(火)夜、ここに、「蜘蛛人算」というタイトルで、以下のような文章を書いた。
蜘蛛人算?!

ちょっとした用足しに、自転車に乗って駅まで行った。駅前に自転車を停めて、お店でお買い物。買い物を終えて自転車の鍵を外そうとした時、荷台に何かがくっついているのに気付いた。
糸くずか。手でさっと払ったが、取れない。
よく見ると、蜘蛛だった。脚の先まで入れても、指の爪くらいの蜘蛛。糸を出してぶら下がっていたのだが、わたしが落とそうとしたのに驚いて、あわてて糸を登って、荷台に直接しがみついた。
払い落とそうともう一度手をやって、ちょっと考えた。この蜘蛛はどこから来たんや?今この数分の間に、駅前の雑踏を縫って蜘蛛が歩いて来たとは考えにくい。おそらくうちの庭の前に停めている間に、自転車を木かなにかのように思って、巣を作ろうとしていたのに違いない。
乗ってきたんやったら、乗せて帰ったらええやん。こんなところで落としたったら、人に踏まれるのが関の山やし。
こうして、人と蜘蛛と、自転車に二人乗りして帰った。

帰り道に、なぞなぞの歌ができた。

  手は二本
  足は十本
  自転車に二人乗りするぼくらは誰だ?  あとり
で、6日(水)の夜、それを自分で読み返した。
内容については、別に問題はない。他愛ないできごとについて書きたかったのだから、これはこれでいい。
ただ、文章のゆるさが気になった。何だか自分の、その都度都度の気持ちをくどく書きすぎたのではないか?
そこが気になりだすと直したくなってきた。
うまく書けなかったら書けなかったなりに残しておいて、次にその反省を生かせばいいようなものだが、もし直したらどんな空気の文章になるかも見てみたくなった。そこで、ばっさり刈り込んだ。タイトルも変えた。
二人乗り

自転車の鍵を外そうとして、荷台に何かがくっついているのに気付いた。
糸くずか。
よく見ると、蜘蛛だった。

蜘蛛と二人乗りして、帰った。
まあ、いいとも悪いとも言えない。確かにだらだらした感じはなくなった。ただ、書き手の気持ちの動きは一切わからない。そこを読み手に丸投げしてしまった恰好だから、ぶっきらぼう。この視点で見えたものをもっと砥いでいったら俳句になるのかもしれないが、文章のままでは不親切かも。
考えたものの、ここで時間切れ。

7日(木)朝、その直した記事に、yukieさんという方からコメントをいただいた。。(9月5日のコメント欄参照。)「どうして消してしまったのですか?」「蜘蛛への気持ちがよく理解でき」たのに……と書いて下さっている。
そんな風に読んで下さる方がいたことが、すごくうれしかった。自分が書いたものが、誰かに「届いた」ことがうれしかった。
そして、自分に、自分の気持ちをばっさり削除してしまう思考癖があることに気付けたこともうれしかった。

yukieさん、ありがとうございます。
by konohana-bunko | 2006-09-07 11:11 | 日乗

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり