『どくろ杯』『就職しないで生きるには』

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『どくろ杯』  金子光晴 中公文庫

生活苦、人間の業の泥沼からたちのぼるガスがつんつんと目に沁みて、なかなか前に進めなかった。1ヶ月ほどかかってようやく読了。こわいもの知らずの高校生の頃に読みたかったなあ、これ。

以下引用。

必死に浮びあがろうとするものの努力に手を貸す行為は花々しいが、泥沼の底に目を閉じて沈んでゆくものに同感するのは、おなじ素性のものか、おなじ経験を味わったもの以外にはありえない。地獄とはそんなに怖ろしいものではない。賽の目の逆にばかり出た人間や他人の批難の矢面にばかり立つ羽目になったいじけ者、裏側ばかり歩いてきたもの、こころがふれあうごとに傷しかのこらない人間にとっては、地獄とはそのまま、天国のことなのだ。(p180「江南水ぬるむ日」)



『就職しないで生きるには』 レイモンド・マンゴー 中山容訳 晶文社

自分は1965年生まれなので、ビルケンストック・サンダルとか、フェイマス・エイモス・チョコレート・チップクッキー、ニュー・エイジとかカウンターカルチャーなんて言われてもよくわからない。よくわからないなりに、3日で読了。
著者はもの書きのかたわら「モンタナ・ブックス」という書店を始める。本が売れても儲からなかったりカードローン地獄に陥ったりパートナーと離婚したりコカイン中毒になったり、まあごちゃごちゃしながら、それでもこどもたちと何とか生きていく。その著者の「仕事」ぶりと並行して、著者のように「就職しないで、自分のしたいことで何とか稼いで生きていこうとする人たち」が、次々と現れては消えてゆく。出版業、魚の缶詰工場、自然食品、レストラン……。何だか、A-BOOKさんも出てきそうだった。

以下引用。

わたしたちは戦争をおこし、核廃棄物をつくりだし、カルマという自然の摂理に心をいためることもなく、隣人をあざむき、コケにできると考えている。わたしたちは、この世だけがたったひとつの生命だから、チャンスのあるうちに、うばい、優位に立とうとおもいこんでいる。いまのようにものにくさりでつながれているかぎり、わたしたちはみじめで悲しい。数字は無限で、どれほど長い数字の列をつくっても、さらに欲望がのこる。わたしたちが生命そのものをこえた高い目的のために生きたいとねがうのは自然のことだ。(p209 「愛は一軒の家から……」)
by konohana-bunko | 2006-11-06 18:55 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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