苺を買う

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仕事の帰り、駅前の露天商で苺を買う。お店の人は袋をくれなかったので、むきだしの苺のパックのまま、てのひらに載せるようにして、駅まで歩いた。
電車はそこそこ空いていた。席に座って膝の上に苺を載せた。
向かいの席に女の人が三人座っている。何か、にぎやかに喋っているなと思ったら、苺の話をしているのだった。
「わたしあんまり、イチゴ好きやないネン」
「わたしもあんまり好きやないワ」
そんな話。そうかあ。そうなんや。わたしは苺、好っきやけどね。いちいち言わんけど。膝の上から、ほんの少しだけ、苺の匂いがする。
隣の席には小柄なお爺さんが座っていた。お爺さんは文庫本を読んでいたが、本から目を上げて、
「おいしそうやなァ」と声を掛けてきた。
「そうですね」
お爺さんは、甘いかなあ、いや、ちょっと酸っぱいかなあ、と、ひとりごとのように小さい声で言っている。こちらのお爺さんはものすごく苺が好きなのだろうか?つい、顔を見たら、お爺さんと目が合った。
「うち、孫がナ、1歳半ですねんけどな、もう歯ァがこう、みんな生えてきて」
「ああ、そうですか」
「苺食べさしたったら、どんな顔するやろなと思て。顔、見てみたいなァ」
お爺さんは文庫本を上着のポケットにしまいながらにこにこした。そして、次の駅で降りていった。
Commented by おやめいけ at 2007-05-12 23:40 x
ヾ(*´∪`*)oc<【。゚・+:.・ァリガトゥゴザィマシタ・.:+・゚。】ヽ(*´∪`*)ノ"
夜、半分こだぬきへ、朝残りイチゴミルクになりました。
Commented by 通りすがり(毎日) at 2007-05-13 00:09 x
そんなお爺さんにはよしてくれへんもんか。。孫のほっぺに苺がテンテン♪そないなれたら・・ちがう世界が見えるんかもなァ ニッコニコ(^^♪
Commented by konohana-bunko at 2007-05-13 20:31
おやめいけさま いえいえ(^0^)ドウイタシマシテ!

毎日さま いやもうあんまりいい笑顔で、わたしもそのお孫さんと会いたくなるくらいでした。
by konohana-bunko | 2007-05-12 22:30 | 日乗 | Comments(3)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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