『文房具52話』  串田孫一

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これはYahoo!オークションにて購入。
山の話のように神々しい断章は出てこないけれど、モノが身近なだけに最初から最後まで親しみを感じながら読み進んだ。
とは言うものの、古い話(もとの単行本は1978年に発行)なので、知らないことばもいくつかあった。広辞苑で引いて確かめてみる。

ようきが【用器画】定規・分度器・コンパスなどの器具を用いて、物体を点や線による幾何学的図形で表現する技法。土木・建築・機械などの設計に応用。幾何画法。←→自在画

てんぐじょう【天具帖・典具帖】(本書の中では「典具帳」)楮の優良な繊維で製したきわめて薄い和紙。室は柔軟で強く、色は白く美しい。貴重品の包装、美術的印刷物の隔紙(へだてがみ)、ガラスの内貼、表装の裏打ちなどに用いる。美濃・土佐の特産。

ははあ。前者は文脈から、数学の図形や技術家庭の製図を想像していたので、当たらずとも遠からずか。後者はてっきり帳面か見本帳だと思っていた。えらい勘違い。ことば2個分だけかしこくなりました。

以下引用。

古本屋で一、二冊本を買うと、必ず店の名の入った紙に包んで輪ゴムをかけてくれた。それを家まで持ち帰ってあける場合は別として、途中の電車の中などで早く読みたくなった時には、その輪は手首に移されることが多い。それを読み進んだ頁と表紙を一緒にして再びかければ、栞代わりにもなる。
だが古本を買った時に、その紙包みを手に持って歩きながら、指先でつまんでは離してパチンパチンと音を立てる。それは無意識に、欲しいと思っていた本を安く手に入れた自分の悦びの表現でもあった。(p67-68「輪ゴム」より)

短剣を象ったペーパー・ナイフを持っていたことがあるが、うっかり落とした時に床板にささった。それ以来、このペーパー・ナイフを所有していると、何か悪いことが起こりそうで、勿体ないとは思ったが処分してしまった。二つか三つに折って、大袈裟のようだが、北海道へ旅に出た際に携えて行って、ある湖を船で渡る時に、湖底へ沈めてしまった。
その翌日、列車の乗換えの時間がたっぷり出来たので、駅を出てコーヒー屋へ入り、椅子に腰掛けてふと横を見ると、全く同じペーパー・ナイフが壁に飾ってあって、どきっとしたことがある。(p150「ペーパー・ナイフ」より)

写真、大阪港の赤レンガ倉庫。ヒマラヤスギの擬態をするツタ。
by konohana-bunko | 2007-05-18 21:48 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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