小さな出来事  野口雨情

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「小さな出来事」    野口雨情

足の短い狛犬はポチに噛ませてやりませう
糸のたるんだ風船と空気のぬけた護謨毬はタマに噛ませてやりませう

弾機の廻らぬ自動車は鉄葉の台へ載せたまま馬車に轢かせてやりませう
翼のゆがんだ木兎は牛に踏ませてやりませうか、馬に踏ませてやりませうか、うしろの沼へ捨てませうか
飛べなくなつた飛行機と共に窓から投げませう

硝子の中の人形も明日はお暇やりませう
何つかの島へ着くやうに
島の人形になるやうに
桐の小函に帆をかけて――大川の水に流してやりませう


*ルビ 弾機…ばね 鉄葉…ぶりき 翼…はね 何つか…どつか

(『野口雨情詩集』彌生書房 p142-143)
Commented by おやめいけ at 2007-05-29 00:13 x
対象に飽いた子供の残虐性なのか?
最後の一節でほっと救われるかな傍観者の気持ち。
Commented by うんぽ at 2007-05-29 08:55 x
すばらしいですね。雨情って・そういう風だったんだ・へぇ・しらなんだ・
Commented by konohana-bunko at 2007-05-30 17:51
みなさま 雨情は五七調の抒情歌で有名ですが、わたしは自由律の詩の中にいいのがあると思いました。やわらかいことばで書かれた酷さ。
by konohana-bunko | 2007-05-27 23:32 | 猫是好日 | Comments(3)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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