犬の話

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雷鳴の轟犬よとくもぐれ  林哲夫

午前中、雷が鳴って激しい雨が降った。この雷雨で、daily-sumusに掲出されていた俳句を思い出し、句を読んで、飼っていた犬のことを思い出した。芋蔓式。
犬はA子といった。雌で、スピッツのかかったような茶色の雑種で、とてもかわいらしい顔をしていた。元は夫の家の家付きの娘犬で、人間であれば義妹ということになる。わたしにもよくなついてくれていたが、時にわたしに対してだけ「つんッ」とした態度を見せることもあり、(さすが小姑)と思うこともなくはなかった。
このA子がある日、家から出て行ってしまった。
もともとA子は雷が大嫌いで、空がゴロゴロいいだすと、もう身も世もなく鼻を鳴らし、居ても立ってもいられない様子でおろおろする犬だった。雨嵐の夜、出掛ける用があって玄関を開けたところ、A子が外へ飛び出した。あまりに雷が怖かったために、パニックになったらしい。
夜中になっても朝になっても戻らない。家族で近所を探し歩いたのだが見当たらない。どないしたんやろ、どないしたんやろと言うている間に三日経ち一週間経ち、三ヶ月経ち、となると心配で気がかりではあるのだけれど半ばはあきらめ、淋しいような宙ぶらりんのような気持ちになっていった。
で。
某夜、その日も雨風が強かったのだけれど、出る用があって扉を開けたら、湿った真っ暗な風に乗って玄関の中に灰色の塊がびゅううと飛び込んで来た。(うわ何?)と思ったらそれは尻尾をぶんぶん振り回している犬だった。えっ。A子か?あんた帰って来たんかいな!
失踪してからちょうど九ヶ月、埃やら煤やらでどろどろになってはいたが、A子はちっとも痩せていなかった。見たことのない首輪をしていた。明らかに誰かから餌をもらっていた様子だった。
次の日洗ってやったら茶色くてふわふわのA子に戻った。A子はまたうちの玄関先の犬小屋に入って、何事もなかったかのような顔をして、わんわん吠えたり耳の後ろを掻いたりしていた。
Commented by nabetsuma at 2007-08-30 12:03
初めまして。蘊蓄のツマです。
A子ちゃん、良かったですねえ。けっこう雷騒動で行方不明になった
ケースでは、そのまま失踪ということが多いようです。

・・たとえどこかで飼われていたとしても、やっぱり長年のおうちが
よかったんでしょうねえ・・

少女の頃スピッツを飼っていたので、スピッツ系のかわいらしい雑種
というのは想像がつきます。一瞬、ポメでしょうか? 

とても良いお話でした・・芋ツル式の。
∧〜∧
・ ・
>●<   nabeわん
Commented by konohana-bunko at 2007-08-31 15:45
nabetsumaさま はじめまして、お世話になります。はい、ポメラニアン(大)です。(^^)駄猫ちょんぴの育ての母でもありました。猫が大きくなっても、よく一緒に段ボールの箱に入って(ぎっちぎちに詰まって)寝てたりしてました。
Commented by やまんね at 2007-09-02 22:44 x
あ~風雨の中を灰色の塊りが飛び込んできた・・・もうここ涙がホロリ、ホロリ・・3ヶ月もどんな旅をしてたんだい?
Commented by konohana-bunko at 2007-09-04 22:20
本当に、もし犬がしゃべれたら何としてでも聞いてみたかったです。
by konohana-bunko | 2007-08-29 23:10 | 日乗 | Comments(4)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


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