『古本屋を怒らせる方法』  林哲夫

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この本、決して「古本屋を怒らせる方法」ばかりが書かれているわけではない。でもこの挑発的(!)なタイトルは成功していると思う。

確かに、「古本屋さん」という存在に、「怒り」という感情は、妙にふさわしい気がするのだ。古本屋さんイコール、本の山の向こうでぎょろッと目を光らせている人。うっかりしていたら叱られそうな、気難しそうな印象。もちろん、実際はそんな人ばかりではない筈なのだが。わたしのイメージの中の古本屋さんが身にまとうこの怒りは一体、どこから来ているのだろうか。怒りっぽい人は、古本屋さんに向いている?まさか。ひょっとして「なかなか儲からない」から?(いや、失礼!)あるいは「いい本が売れない」ことへの義憤?

さてこの『古本屋を怒らせる方法』、本に関するよもやま話が、散歩の途中に目に映る景色のようになだらかに展開されてゆく。
本の話だから、作家の名前や書名が次々と登場する。でも、わたしは大して本を読んでいないので、ほとんどがわからない。わからないまま読む。退屈はしない。知らない人同士の会話を、聞くとはなしに聞いていたら、和やかな気分が伝わってきて、こちらも何となく楽しい気持ちになってくる、そんな感じ。(で、つい、つられて鍋井克之の本を注文してしまった。この芋蔓式も読書の楽しみのうちのひとつ?)

そんな中で自分の体験にひきつけて読むことができたのが「ヤフオク、負けるが勝ち」の章。オークションのつわものの奥様と著者がタッグを組んで、希少な雑誌の落札に挑むシーン。
《「オークションは終了間際が勝負なのよ。まずは様子を見ましょう」》
《「終了一分前からが勝負なのよ!」》
臨場感のあるこのやりとりが実に面白い。おまけに、無事落札後、競り合っていたうちの一人が出品者本人だった(売り手が値段を吊り上げていた!)ことが判明するというオチまでついている。

本の愛好家に向かって
《「いったい何冊くらいあるんですか」
「これ全部読まれたんですか」
「月に何冊くらい読みますか」》
という愚かな質問をしてはイケナイ、という、「三つの質問」の章も、楽しい。
別の章に出てくる愛好家が、
《「いっそ読んだろか、思てんのやけど」と苦笑い。そのココロは「買った本を読むなんて、そんな野暮な」というところか。》
と話すくだりと合わせて読めば、古本好きの心意気(病の深さ)が見えてくる。わたしは古本屋以前に、人としてまだまだ修行が足りないので、本はやっぱり読むか、売るか、どっちかやと思っているのだけれど、本好きな人の話は、読んでいて飽きなかった。何だか自分も、好きな本について、本を通して出会った人について、誰かとおしゃべりしたくなった。

写真、奈良のフジケイ堂小西通り店。
Commented by かねちょも at 2007-09-28 22:44 x
毎日のように通りかかっていたのに、「BELL」の看板、まったく気付いていませんでした。うわあ。
Commented by konohana-bunko at 2007-09-29 17:38
わたしも写真を見てはじめて「BELL?」と思いました。なぜ目立たないのでしょうこんなにデカいのに。

この日、フジケイ堂さんで、お客さんが下の方の本を抜こうとして山を崩すのを目撃しました。
Commented by nara-chirindo at 2007-09-29 21:53
私も気付いていませんでした。。。
BELLって何なんでしょう??
フジケイ堂はむか〜しむかし、いそかわ(現パケット)2階店だった頃によく入り浸っていたものです。
もう10年以上も前です。懐かしや。。。
『古本屋を怒らせる方法』はぜひぜひ読んでみたいと思ってます。
Commented by konohana-bunko at 2007-09-30 16:48
chirindoさまもお気づきでなかったとは!いよいよ深まるBELLの謎。

まだ行ったことのない奈良の古本屋さんもたくさんありますので、またぼちぼちと訪ねていってみようと思います。(カメラ持って……厚かましく……汗)
Commented by tin_box at 2007-10-01 17:41
私、最近オークションはじめたので、よっく分かります。
つい昨日も、終了間際に油断して席を外したら、スカッと持ってい。かれました。
値を吊り上げるのは、そうだとしたら、見極めが難しいですよね。
あらかじめ相場を知っておかないと、痛い目みます。
Commented by konohana-bunko at 2007-10-02 20:46
tin boxさま 『出品者を怒らせる方法』があったら読んでみたいですね。(^^)
by konohana-bunko | 2007-09-28 19:44 | 読書雑感 | Comments(6)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


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