『幼な子の歌 タゴール詩集』

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高校の頃は詩も読んでいた。中原中也と、立原道造が好きだった。それ以後あまり読まなくなった。ここ数年でかろうじて読んだのは、西脇順三郎、安西冬衛、荒川洋治くらい。あ、辻征夫、宮澤賢治もあるか。
現代詩が、わからないのだ。どこをどう味わえばいいのか?一連の中に、数行、(あ、ええナ)とこころ魅かれる部分は見つけられるけれど、詩はその前にも何行もあり、そしてそのいいところを通り過ぎてまだ(場合によっては)何十行も続いてしまう。で、往々にして、よくわからないまま唐突に終わる。本当はちゃんをワケあってそこで終わっているんだろうけれど、そのワケが、うまく読み取れない。短歌俳句のように、リズムで気持ちよくなるというわけにもいかない。
あまり読まないからわからないのか。もっと読めばいいのか?



『幼な子の歌』には、作者のこども時代のことを書いた詩、母と子の情愛について歌った詩が収められている。
以下引用。

《(頭略)

世の悲しみを知らない 稚(いとけな)い笑顔の幼な子たちが
  笑いながらあなたがたの戸口にやってくる
初々しい目をあげて 戯れ揺れながら
  四方(よも)を見ている
黄金(きん)色の太陽の光や お母さんの顔が
  どんなに心地よいことでしょう
この地上に 知らないうちにきていました
  埃を埃とも知らず すべてが彼らの宝物です
この子らを膝に抱きあげてください――泣いて帰らせないように
  喜びの中に悲しみを起こさせないように
胸の真ん中に置いて 充ちあふれた心で
  この子らに祝福をお与えください(後略)》(p209-212 「祝福」)

《  坊やはお母さんに尋ねます
  「ぼくはどこからきたの?
どこでぼくを拾ったの?」
  お母さんはそれを聞いて坊やを胸に抱きしめ
  大笑いして言います――
あなたは私の心のひそかな願いだったのです

  私の幼い日の人形遊びの中にいました
  朝 シヴァ神へのお祈りの時も
あなたはわたしとともにいました
  あなたは私の神さまと一緒に
  お祈りの玉座にいたのです
神さまへの祈りはあなたへの祈りでした
  私の永遠の希望と
  すべての愛の中に
私のお母さんとおばあさんの生命の中に――

(中略)

  いくらあなたを見つめても
  みんなのものだったあなたが
どうして私のものになったのかその謎は解けません
  あの人とこの人が出会い
  あなたはお母さんの坊やになり
愛らしく笑ってこの世に現われた(後略)》(p121-123 「誕生の話」)

「あなたは私の心のひそかな願いだったのです」という一行に、胸をつかれる。そう、今頃になって。こどもはとっくに自分よりデカくなって、取り返しがつかないあれこれだけが、買ったまま読んでいない本のように手許に残ってゆく。
by konohana-bunko | 2007-11-11 21:34 | 読書雑感

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり