『花柄』  魚村晋太郎

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2007年最後に届いたメール便。包みを解くと、(まあ、)とため息が出た。魚村晋太郎さんの第二歌集『花柄』。

第一歌集『銀耳』も、この第二歌集『花柄』も、同じ砂子屋書房、倉本修さんの装幀。『銀耳』の造りは、歌集の王道を行く雰囲気だった。だけど(だからこそ?)、魚村さんにはちょっぴり、地味な気がした。例えて言えば〈すごく仕立てのいい、上質なツイードのジャケット、但し父のお下がり〉みたいな感じ。『花柄』は、カバーもない。帯もない。こちらは、白磁のお皿のような本。何てきれいな。



本を読んでて、(終わるな!)て思ったのはいつ以来やろか。あかん。好きすぎてよう書かん。堪忍して下さい。(←どなたにともなく。)好きな歌だけ、引かせて下さい。



   『花柄』より

いつかまた出遭ふだらうか痛いほど細部を見てた頃の世界に

嘘をつむ河原があつて積むひとの声がしづかだ沈黙よりも

おわかれを言つて別れたことがないガム噛みて手にあます銀紙

一緒に来た瓦斯が別別の穴を出て湯をそそのかすやうに春の夜

踏まれるための鉄の板あり出来損なひの×(ばつ)のごときをあまたならべて

この夢は素早く見よと白い粉溶けてコップのむかう葉桜

のつぺらばうひとりもあらはれぬまひる豆腐の絹は水にかさなる

さげた瓶のふれあふ音が壁越しに近づいてくる古草の野を

のぼるときよりゆつくりとしづむ星つめたい耳に耳はささやく

パンの屑しるべにおとす兄妹のやうだつたふたり落葉をふんで


          『銀耳』より

     残酷な包みをあけた日があつた 花水木、風に白をかかげて

     白梅町冬の底なりいたづらなおとうとの手がわたしをさがす

     伐るまへの竹にみちてたひかりかもしれないなんどしても飽きない

     口のなかまで空が来た 寒いつてさむいつて言へおれのかはりに

     ボトルに口をつけてのむとき真水にもおよぶとおもふ月の引力

by konohana-bunko | 2008-01-08 22:38 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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