「女たちへのエレジー」  金子光晴

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『金子光晴詩集 第二巻』(中央公論社)を読む。天神さんの古本市で買ったもの。本の背に箔で押されているカミキリムシが格好いい。カミキリは、大きいのも小さいのも、断然格好いいんだ。

「鮫」「落下傘」「蛾」「女たちへのエレジー」が収録されている。以下引用。

  無題

ヒンヅー寺の塀のバラモンは、極彩色の悪相な神。雙つの眼では足らず、豆が莢からはじけるやうに、縦に眉間を割つてかがやくも一つの眼。背なかからはえた六本の手は、てあたりしだいにものをつかむ。うしろには深紫の空がばらんばらんと音を立てて燃え上り燃えくづれ。

ココ椰子は八つの乳房。バナナはびつしり並んだわが指があとからあとから重つて成長してくるので、数へきれず、途方にくれてゐるといつたていたらく。足二本、手二本であらねばならぬひうまにずむでは思ひも及ばぬはみだした生きやうで、いきてゐるここの世界。

痩せ脛のヒンヅー・タミールは、夕ぐれのカキ・ルマにしやがみ、ぬれた芭蕉葉の皿のうへに、おもひおもひの品をならべて、客を待つ。そのしなじなは何何。擯榔の実。唐辛子。羊のふぐり。それから胴切りにした鰐と、金環をはめた女の片方の腕。

(p308 「女たちへのエレジー」より。原文は旧字体)
by konohana-bunko | 2008-04-15 22:25 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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