愉快なクリム ―朝鮮民画

c0073633_215011100.jpg
大阪の東洋陶磁美術館に、お気に入りの壺がある。朝鮮のもので、大きな白い壺のぐるりに、鉄色で虎が描かれている。いっこも虎らしくない、猫みたいな虎。もうひとつ白い壺がある。これには藍色で、獺みたいな虎が描かれている。同じような手で魚や鳥の絵の壺や皿もある。巧みじゃないのに妙にいきいきしている、この手の「えいやッと描いちゃいました」的な絵は一体何なんだろう?と、見るたびに思っていた。

今回の展覧会ではじめて「民画」ということばを知った。庶民の日常の生活空間を飾るための絵。館報によると《これらの絵の多くは名もない絵師が村から村へと移っては生活に必要な絵を描き残し、古くなって破れたものを描き直しては立ち去ったものといわれる。絵の特徴は落款がなく、愉快な雰囲気を保ちながら、大胆不敵な構図で描かれることが多く、宮廷画員の描いた才知に富む絵とは同次元で考えることのできない奔放な作風》である、という。
また、鵲虎図(じゃっこず)という伝統的な図案(虎+カササギ+松の木)には、魔よけと招福の意味があるということもわかった。なるほど、件の壺に描かれていた虎というのは、邪をよけて家が栄えるおめでたい柄だったわけだ。

そういう知識も得られてよかったけれど、何より絵そのものが楽しかった。どう見ても猫っぽい、ケンカしたら強いのんか弱いのんかようわからん豹柄の虎とか。親切そうに顔を寄せている割には目つきの悪いカササギとか。折り紙を谷折りにしたみたいに下半身にひねりが入っている魚とか。どんな人が、どんな顔をしてこの絵を描いてたんやろね。絵だけで食べていけとったんやろか。ものすご上手でなくても(あいつの絵は験がええ)なんて噂があったら、注文のお声が掛かったりも、したんかなあ。あんまりのびのびとした絵なものだから、ノートに真似して落書きしたくなった。
c0073633_2150396.jpg
高麗美術館はこぢんまりしているけれど、隅々まで気持ちのいい空間だった。庭に、おがたまの花が咲いていた。果物のような匂いがした。
c0073633_21511210.jpg
さっき思い出して金井美恵子の『切りぬき美術館 スクラップ・ギャラリー』(平凡社)を引っ張りだしたら、ちゃんと李朝民画の章が二つ、あった。「トラの魅力は全身を見事に覆う〈縞性〉にある」なんて書いてあって、トラも猫もやっぱり縞やんナ、と、ここは一も二もなく加担してしまうのであった。
Commented by bochibochi35 at 2008-05-21 09:41
そうですよねぇ。縦じまやったらもっといいですけど・・・(笑)
ぼちぼち歩いておりますが、何とか入口まで辿り着きました。
ところで、このはなさんは「プレート」の写真を載せていらっしゃいましたが、ぼくはもらえませんでした?なんででしょうね?
どこかでお会いしたらいろいろ教えてくださいませ。
「東洋陶磁美術館」静かでいいところですね。久しぶりに行って見たくなりました。
Commented by konohana-bunko at 2008-05-21 22:44
ぼちぼち堂さま 着々と古本道を進んでおられますね!
あのプラスチックのプレートは、警察の窓口の方が斡旋してくれた業者さんで作りました。注文するかどうかは自由で、自作でも可だったように記憶しています。府県によって異なるのかもしれませんね。
by konohana-bunko | 2008-05-20 21:42 | 日乗 | Comments(2)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
プロフィールを見る
画像一覧