駒井哲郎銅版画展

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7月某日、名古屋に出掛けたことは前に書いた。この時、名古屋ボストン美術館に寄ったのだった。
メインの展示は「クロード・モネ展」。だいたい時系列に従って、若い時に影響を受けた人の作品なども交えながら展示されている。浮世絵から受けた影響を解説するところでは、浮世絵とモネの作品、同じ構図のものが並んでいる。見比べることができて、面白い。

絵に近づいて見てみると、ものすごく厚く塗って塗って塗り重ねられている。ようけ絵の具が要ったやろうなあ。光や風のように、うつろいやすいものを絵に描こうとしているせいか、ものの輪郭がおぼろで、眼鏡を外して景色を眺めているような気分になる。そこがちょっともどかしい。積みわらの絵、並木の絵、睡蓮の絵など、いろいろ。
運河の景色を描いた絵がいいと思った。煉瓦の倉庫があり、そこに傾いた日が当たっている。日に照らされて桃色を帯びた煉瓦の壁が、水面に映っている。そんな絵。

モネ展を出ると、隣の展示室で別の企画をやっていた。駒井哲郎銅版画展。ついでやし見ていこ、と、軽い気持ちで入ったら、最初の作品から目が吸い寄せられてしまった。銅版画、モネとはうってかわって、ほとんどがモノクロで、小さい作品ばかり。ハガキより小さいものも。でも、小さい中に宇宙がきゅっと入っているような感じ。
奥に行くと、銅版画と俳句のコラボレーションになっている。この俳句がなかなか気に入った。

汗も拭かず見てをりし画をつひに買ふ*  馬場駿吉

詩は刻の断面薔薇の棘光る*

銅版画の黝き世界に昼寝覚

落葉踏む旅心いまなほ北を指し

春暁の生みより星を釣りし夢

人もまた太初海棲桜貝

めつむれば眼玉気球となる春夜

(すべて作者は馬場駿吉。*は句集『断面』より、無印は新作。)

このあたりまで見て、フライヤーを読み直し、ようやくどういう企画展なのか理解した。馬場駿吉は医師、俳人で当名古屋ボストン美術館の館長。若い時に駒井哲郎の銅版画に出会い、親交を深める。作品を買い集めたり、句作に影響を受けたり、句集の装幀を依頼したり。そのコレクションがここに出展されているというわけ。やるな館長。
by konohana-bunko | 2008-08-12 10:10 | 日乗 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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