いきもののはなし

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朝、起きて台所に行くと、何かの気配がする。
流し台に漬けてあったガラスのコップ、半分ほど水が溜まったその中に、虫がいた。ブンブンだ。銅色の大きなブンブン。
ブンブンは六本の足を水中にだらんと開き、背中を水面から出し、浮き身の格好でじっとしていた。
(死んでんかな)と、背中をつついたら、足が動いた。
コップを持ってベランダにゆき、コンクリートの床にコップの水をあけた。ブンブンは仰向けにひっくり返っている。足をじわっと伸ばしたが、あまりじたばたしない。一晩水にはまって、相当疲れているようだ。
背中側から指でつまんで、植木鉢の土の上に置いてやろうとしたら、自分から植木鉢の縁につかまった。
ブンブンはしばらくじっとしてから、まず、右の前脚を動かした。右の前脚で、頭部をさすった。次に、左の前脚。顔(顔?)や触覚を、人間が「いやーまいりましたなー」と頭を掻く仕草のように、足でこする。次に、左の後脚を器用に反らして、丸くふくらんだ鞘翅の上を撫でる。左脚を降ろすと、また右の後脚でも、同じ動き。どうやら体の水気を拭い取ろうとしているらしい。
右前足で顔、左前足で顔、左後足で背中、右後足で背中、と、順番は時折入れ替わったが、一度に二本の足を動かすことはなかった。真ん中の一対の足は、体を支えるためだけに使っていた。
そこまで見て、あとは食事の支度をするために台所に戻った。一時間ほど経ってからベランダに出たら、ブンブンはもういなくなっていた。
Commented by 和人 at 2008-08-21 16:00 x
ブンブンっていうのは、カナブンのこと?でしょうね。
それにしても、じっくり観察されたこと。よーく分かりました(笑)

ブンブンの命を助けましたのでちょっと太目の蜘蛛の糸1本。
Commented by konohana-bunko at 2008-08-21 16:17
和人さま はい、カナブンです。カナブンでよかったです。(^^;)
Commented by minstrel1209 at 2008-08-22 21:26
きっと
ブンブンからの
恩返しがありますね これは^^*
Commented by konohana-bunko at 2008-08-23 22:59
minstrel1209さま いやー。あるでしょうかねえ。(^^)
by konohana-bunko | 2008-08-21 14:06 | 日乗 | Comments(4)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


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