中城ふみ子 浜田到

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『現代短歌体系11』(三一書房)、「夭折歌人集」より引用。

中城ふみ子  『乳房喪失』抄より

出奔せし夫が住みゐるてふ四国目とづれば不思議に美しき島よ

母を軸に子の駆けめぐる原の昼木の芽は近き林より匂ふ

絵本に示す駱駝の瘤を子が問へば母はかなしむその瘤のこと

冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己れの無惨を見むか

砕氷をとほく棄てにゆく馬車とならびて青の信号を待つ

子が忘れゆきしピストル夜ふかきテーブルの上に母を狙へり

公園の黒き樹に子らが鈴なりに乗りておうおうと吠えゐる夕べ

浜田到    『架橋』抄より

さはやかなランプに翳す雪の夜のこの手の匂ひ誰のものか知らず

ちひさき灯、生の表面(おもて)へのぞかせつ秋おもむろに果実店熟る

哀しみは極まりの果て安息に入ると封筒のなかほの明し

天道虫に晴曇の斑(ふ) みづからを攀づるが如くきたりて中年

水族館に灯が点りをり医者の耳に人生まれ人死にやまず

天井薔薇色に焚火の男生(あ)るるとき深夜校舎に使丁を愛す



引用終わり。中城ふみ子(1922-1954)のことはみなさんご存知かと思う。浜田到(1918-1968)の名前は(恥ずかしながら)今回この本ではじめて知った。アメリカ生まれ、医師で、往診の帰路、自動車事故で亡くなったとある。
by konohana-bunko | 2008-10-10 13:11 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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