相良宏  岸上大作

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ひきつづき、『現代短歌大系11』より引用。

相良宏  『相良宏歌集』抄より

こひねがひなべて虚しく手を涵す秋のれんげのやわらかにして

犬の仔を犬の乳房に押しつけて少年はたのし手を一つ拍つ

暗緑の脚らもがけるかなぶんぶん眠りの前のやすらぎとなる

生活といふには淡き生活の或る日心電図をとられをり

四月より五月は薔薇のくれなゐの明るむことも母との世界

ながらへて脆き前歯を欠かしめし白桃の核を側卓に置く

岸上大作  『意思表示』抄より

意思表示せまり声なきこえを背にただ掌の中にマッチ擦るのみ

海のこと言いてあがりし屋上に風に乱れる髪をみている

血と雨にワイシャツ濡れている無援ひとりへの愛うつくしくする



引用終わり。相良宏(1925-1955)は、3年くらい前、塚本邦雄の評論に引用されていた「生活といふには淡き生活の或る日心電図をとられをり」という一首を目にしてから、一度読んでみたいと思っていた歌人。仕事の行きがけ、ちょうど西大寺の駅で一旦電車を降りて、5番線ホームから3番線ホームへ移動する時にそのくだりにさしかかったのだった。

歌集を読んで、いいと思った歌を抜き書きする。そのノートに写した歌の中から、またいくつかを選んで、ブログに転記する。好きな歌集で行うこの作業は楽しい。
読む時の気分や体調によって、選ぶ歌は違ってくる。今の自分は割合静かな歌に惹かれるらしく、岸上大作はあまり気持ちにひっかからなかった。中城ふみ子の歌なら、愛憎がきつく匂う、いかにもふみ子らしい歌よりも、「絵本に示す駱駝の瘤を子が問へば母はかなしむその瘤のこと」の方が身にしみる。

昨日よいと思った歌を、今日いいと思うとは限らない。何年たっても、何度読みかえしてもその都度あたらしく惚れ直す歌もあると思う。だから自分が歌を書くときは(どうか少しでも長い時間の「読み」に耐えられる歌になりますように)と、祈るような気持ちになる。
by konohana-bunko | 2008-10-11 22:28 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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