小野茂樹 小名木綱夫

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『現代短歌大系11』からの抄出、つづき。

小野茂樹  『羊雲離散』抄 より

朝空を揺らしてわれら別れたりどこでも新聞を売る朝なりき

てのひらを水面に押せばあふれつつこの直接もきみを得がたし

飴色の蟻の死とわが気付くまで昏れむとむしろ明るき日ざし

材木のあまき匂ひの漂ひを行き過ぐるとき風の壁あり

あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ

剪られたる花々の茎地にあれば霧は下れり一夜をこめて

垣間見しゆゑ忘れえぬ夕映えのしたたる朱は遠空のもの

母は死をわれは異なる死をおもひやさしき花の素描を仰ぐ

鉛筆の芯のとがりの輝けば夕づく日ざし机上にあそぶ

くさむらへ草の影射す日のひかりとほからず死はすべてとならむ

ゆきずりのわが魂にぬかるみをなづめるとほきくれなゐの傘

小名木綱夫  『太鼓』抄 より

おほかたの書物は焼けて寂しさの日にけにつのる麦は穂にでて

粥を待つ小さき口に歯の二枚あらはに吾児は掌をうちまてり

何か云ひ抛り出せし人形を乳のみ了へてまた抱きにゆく

夫われが仕事にて更ける夜の刻(とき)を帰り待つ妻はぼろくそにいふ



引用終わり。今回この夭折歌人集の中で一番多くノートに写したのが小野茂樹だった。「あの夏の数かぎりなき―」や「くさむらへ草の影さす―」はあまりにも有名だけれど、その他にも余情たなびく歌がたくさんあってうれしかったのだった。並びの最後にある「ゆきずりのわが魂に―」、すごくいい。でもこの歌、いざ読み解くとなると難しそう。

対して、小名木綱夫(1991-1948)の歌は伝えたいことそのままの歌でわかりやすい。思うに任せない日常を詠んだ作品が多かったが、その中にぽつぽつと出没する妻子の姿がいきいきとしていた。

次はいよいよ最終回。
Commented by ひまわり at 2008-10-20 13:08 x
「ありふれた空」を購入いたいのですが。
Commented by konohana-bunko at 2008-10-20 16:51
ひまわりさま ありがとうございます!在庫ございますので、当方から郵便振替用紙を同封して、クロネコメール便でお届けいたします。お手許に届きましたら、郵便局よりご送金下さいませ。
こちらのコメント欄に、「非公開コメント」の四角にチェックをされた上で、ご希望のお届け先(ご連絡先)をお知らせ下さい。(「非公開」とすれば、他の方からは読めません。)
どうぞよろしくお願い申し上げます。
Commented by ひまわり at 2008-10-20 20:43 x
こんばんは。
>こちらのコメント欄に、「非公開コメント」の四角にチェックをされた上で。。。
非公開コメントのチェックがどこにあるのかわかりません。
Commented by konohana-bunko at 2008-10-20 21:32
ひまわりさま お手数お掛けいたします。では、
konohanabunko08☆yahoo.co.jp
(☆の部分を@に置き換えて下さい)
まで、メールでご連絡いただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします。
Commented by ひまわり at 2008-10-21 05:20 x
おはようございます。
昨夜、メールを送いたしました。
by konohana-bunko | 2008-10-15 14:29 | 読書雑感 | Comments(5)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


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