カテゴリ:空中底辺( 272 )

知らないことを思い出す

何か書かないとこころが干からびる。かと言って、くだらないことを書き散らしても、後でこころがささくれだつだけ。わたしはただの容れものだ。書きたいという思いだけがあって、具体的な中身が何もない。

ことばの遅いこどものように、しゃがみこんで土や虫や花をぼんやり見ている。何も感じていないわけではないのだ、断じて。こころはいつも動いている、逆に、感じ過ぎて苦しいくらいだ。しかし、どんなに情緒や情趣が渦巻いていたとしても、表現しなければ、それらは「ない」のと同じなのだ。

知らないことを思い出すのと同じ行為だ。うたを詠むということは。
by konohana-bunko | 2014-12-03 19:07 | 空中底辺 | Comments(3)

石になったら楽かもと思っていたら石になっていた。息をするのが楽なような、大して変わらないような。傷つけられる痛みは感じなくなったが、感覚が麻痺しただけで、相変わらず削ったり削られたりしているのだ、きっと。もっと磨り減ってしまいたい。誰にも気づかれないくらいなめらかに、やわらかく。
by konohana-bunko | 2014-10-08 20:28 | 空中底辺 | Comments(3)

入魂

体調を崩し病院へ。診察と点滴の後、迎えに来てくれた夫が「あんたえらい格好で」と言う。家を出る前(苦しい、どれでもいい)と箪笥から出して着替えたそのシャツは、夫の、しかも背中にデカデカと〈一音入魂〉の筆文字がある部活用のもの。うう、病院中の人に見られた。わし、楽器何もできひんのに。
by konohana-bunko | 2013-10-02 17:47 | 空中底辺 | Comments(0)

windchime

c0073633_17571497.jpg
風の音で目が覚めた。薄曇、北風。昨日まで暑くて、どこかで法師蝉が鳴いていそうだったのに、今朝は山鳩が鳴いているだけ。秋はこんな風に来るのだったか。今現在の季節に目を見張るのに精一杯で、過ぎた季節のことはすぐ忘れてしまう。風がどっと吹き込んで、壁のwindchimeが小さく鳴った。
by konohana-bunko | 2013-09-26 17:53 | 空中底辺 | Comments(0)

住基カード

c0073633_1813867.jpg
運転免許は取っていない、パスポートも期限切れ。顔写真付き身分証明書がない不便さに音を上げて、住基カードを作りに市役所へ。「顔写真付きの身分証明書をお持ちであれば即日発行できますが」そうなのよ窓口のお嬢さん、それさえあればねえ……!本人確認の郵便の到着を待って再度窓口へ行くことに。

改めて住基カードを受け取りに市役所へ。今朝窓口にいたのは若い男性職員。細身に細面、重めの巻毛、白いシャツにネクタイ、その上に作業服を羽織ったいでたちは……明和電機の社長そっくり!(あとこの人が黒縁の眼鏡さえ掛けていれば)と妄想していたところで番号を呼ばれ、無事、住基カードを入手。
by konohana-bunko | 2013-09-17 18:00 | 空中底辺 | Comments(0)

剪定

庭の蠟梅が例年を上回る徒長枝を出し、上階に届きそうな勢いに。マンションの樹木剪定の日、作業に来た園芸屋さんに恐る恐る頼んでみたら、二つ返事で整枝に来てくれた。高い梯子も軽々と、十分程度ですっきりした樹形になった。いとありがたし!本職の人に切ってもらえて、木も喜んでいたに違いない。
by konohana-bunko | 2013-09-16 18:02 | 空中底辺 | Comments(0)

雨の蟷螂

c0073633_1855011.jpg
夜、雷鳴。そして久々の雨。庭の戸締まりに出たら、フェンスの網目に蟷螂が掴まっていた。フェンスも蟷螂も大粒の雨に濡れ、滴をいっぱいつけている。街灯の淡い光を受けて、蟷螂の影は切絵のように暗く、滴だけが白く透けて――そこへ稲妻!ガドルフの百合の生まれ変わりに違いない、この若い蟷螂は。
by konohana-bunko | 2013-08-23 18:04 | 空中底辺 | Comments(0)

守宮

猫が傘立てと壁の隙間を凝視しているので、一緒に覗いてみたら、守宮がいた。「勘弁して下さい」と言いたげに、大きな眼を見開いていたので、箒でそっと追い込んで奥へ逃がしてやった。脱皮の途中だったらしく、首に脱げかけの白い皮が巻き付いていたのが、タオルを巻いているように見えて可愛かった。
by konohana-bunko | 2013-08-22 18:06 | 空中底辺 | Comments(0)

朝の藍

朝、駅へ向かういつもの道すがら、朝顔に惹かれて裏道へ曲がる。仕舞屋ばかりが並ぶ路地、古家の軒端に小振りな花が咲いている。藍色の地に白い星形の斑をくっきり染め分けた花が、凛と花弁を張っている姿を見ると、あらためて胸を衝かれてしまう。朝顔なんて、子供の頃から見飽きている筈なのに――。
by konohana-bunko | 2013-08-21 18:07 | 空中底辺 | Comments(0)

七夕

c0073633_1813376.jpg
七夕。夜遅く農道を走っていたら、頭上で今迄見たこともないほど沢山の星が光っていることに気が付き、びっくりしてしまった。自転車を停めて見上げた天の高みにうしかい座。北寄りに柄杓星が傾き、その下には僅かな光を反す早苗田の水。梅雨はいつも、こんなに美しい光たちを雲の陰に隠していたのか。
by konohana-bunko | 2013-07-24 18:11 | 空中底辺 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
プロフィールを見る
画像一覧