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冬の日

南向きの窓から日差しが入って来る。冬日は柔らかく、暖かく、眠りに落ちた猫の身体のように伸びきって、部屋の奥まで届こうとしている。眩しさにカーテンを半ば閉じると、カーテンに影が映った。臘梅の枝の影、そしてそこから飛び去る、小さな虫の影。窓がみしりと鳴り、葉の影が一斉に揺れた。北風。
by konohana-bunko | 2011-11-25 14:52 | 空中底辺 | Comments(0)

なでられるのは

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まんざらでもない、の表情。
by konohana-bunko | 2011-11-24 14:40 | 猫是好日 | Comments(3)

帽子娘

駅で帽子娘とすれ違う。わたしが勝手に帽子娘と呼んでいるだけで、本当の名前は知らない。二十代位の小柄な女の子。太縁の眼鏡にリュック、足許はサボかブーツといった着こなしは、派手目な森ガールか、あるいは鳥山明のキャラクターと説明できなくもないけれど、やっぱりちょっと違う。最大の特徴はやはり、彼女が必ず被っている帽子。
花の塊のような、尻尾の太い動物のような、あるいは異星の貴族のような大きな帽子――おそらくは自分で作ったもの――を、彼女は毎日被って歩いている。目立つ。それを見た塾帰りの中学生が、振り返ってくすくす笑う。わたしも見る。でも笑わない。よく似合っているし、とてもチャーミングだから。彼女は自分の旗をかかげて、胸を張って生きているのだ。
by konohana-bunko | 2011-11-22 14:46 | 空中底辺 | Comments(0)

ものの名

辞書や図鑑を繰っていて、調べものに関係のないこと、特に動植物の名に目を惹きつけられることがある。例えば、ヤマボウシ。花を見て(これ何ていう木やろ)と思っていたので、まず名前が判ったことがうれしく、そしてその名の音にも文字にも趣のあることがなおうれしく、ますますこの木が好きになった。
「ヤマボウシ」と声に出して呼べば、走り梅雨の湿った風の匂いや、繁る青葉の小暗さ、あるいは秋に色づいた丸い実が思い浮かぶし、「山法師」と文字に書けば、あの折紙で拵えたような白い包が、木の間隠れに覗く行者の白い衣のようにも思える。名前を知ると、名前一つ分だけ、私の中の世界が深く、広くなる気がする。
うつくしいものの名を覚えたら、何とか自分のことばとして使ってみたくなる。歌にうたいたくなる。ものの名のうつくしさに、せめて礼することができればと願いながら詠む。気持ちの弾みに見合う程うまく歌になるかどうかは別として。
by konohana-bunko | 2011-11-20 12:58 | 空中底辺 | Comments(2)

悪い夢

昔住んでいた家に母といた。母が悪い借金をしたとかで、背広の男が大勢現れ、家の中の一切合切を運び出しはじめた。母に確かめると「だってしょうがないじゃない」。ああ、この人はいつもこうだ、それにしても書きかけの原稿が、大事な本が、と思ったところで目が覚めた。たかが夢と片付けられない夢。
by konohana-bunko | 2011-11-17 19:14 | 空中底辺 | Comments(0)

歳時記

歳時記を買ったきっかけは、俳句ではなく、インターネットの連句に混ぜてもらうためだった。上本町の天地書房に赴き、「あの、歳時記……」と言い終わらないうちに奥さんが棚から「はいこれ」と抜いてくれたものを、何の疑いもなく買ったのだった。値段は忘れた。山本健吉編『最新俳句歳時記』昭和四六年初版。
by konohana-bunko | 2011-11-17 13:06 | 空中底辺 | Comments(2)

はつふゆ

はつふゆ。雨が降ると心が閉じ、日が差すと心が開く。なるべく日に当たって心を温めておく。自転車で過ぎる畑の隅に小菊が咲いている。遠目にも鮮やかな色のマッス。びっしり実を付けた柿の木に、鵯が飛んで来た。実を啄まれる時、木はどんな気分でいるのだろう。結構気持ちがいいんじゃないだろうか。
by konohana-bunko | 2011-11-12 19:24 | 空中底辺 | Comments(4)

数え歌

風のない午後。五年生位の女の子が二人出てきてバドミントンを始めた。何回続くか、数え歌で数えながらシャトルを打つ。「いち」「にの」「さんまの、」「しっぽ……!」笑い声。何度も続けるうち、とうとう十まで続いた。いちにのさんまのしっぽ、ごりらのむすこ、なっぱ、はっぱ、くさった、とうふ。
by konohana-bunko | 2011-11-12 19:16 | 空中底辺 | Comments(0)

バスバブル

風呂の蓋を開けると、湯船が一面の泡で被われている。先に風呂に入った夫がバスバブルを入れたのだ。さっき「早よお風呂入り」と言っていたのはこのことだったのか。泡に浸かり、顎まで埋まってみる。あたたかい。小さな泡がちびちびとこわれてゆく音を聞く。今日という一日が、弾けて消えてゆく音を。
by konohana-bunko | 2011-11-11 12:49 | 空中底辺 | Comments(0)

読書の記録 神無月

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『河岸忘日抄』 堀江敏幸 新潮文庫
『しでんとたまご』(絵本) 川崎洋さく 佐藤国男え 福音館書店
『ちいさなにわのちいさなむしたち』(絵本) 岩本敏男さく いとうひろし え 福音館書店
『中勘助の恋』 富岡多惠子 創元社
『I<わたし> 真実と主観性』 デヴィッド・R・ホーキンス著 立花ありみ訳 ナチュラルスピリット
『金襴緞子』(歌集) 久保芳美 六花書林
『水牛の余波』(句集) 小池正博 邑書林
『渾齋随筆』 会津八一 中公文庫
『橘曙覧評伝』 折口信夫 文部省教学局編纂 日本精神叢書53

『渾齋随筆』は読んでよかった。奈良のことがたくさん。歌のはなしも。ことばに、表現に、向かってゆく粘り強さ。何年か前に買った『自註鹿鳴集』は、微に入り細に入る註釈の「こうるささ」に負けて途中で投げ出してしまった。今なら読めるかもしれない。読むべきかもしれない。

10月、久し振りに心斎橋のブに行ったら、いつの間にか京都三条のブみたいに200円のお店になっていた。(随分前からそうなっていたのだろうと思う。半年以上来ていなかったのかも。)その分よさそうな本がいっぱいで、棚を見ていて楽しかった。『水牛の余波』を見つけた時はとてもうれしかった!表紙の写真、格好いい。水牛好き。
by konohana-bunko | 2011-11-08 14:33 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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