<   2011年 12月 ( 15 )   > この月の画像一覧

歳末の花店

c0073633_19195763.jpg
午後四時。日のあるうちにと買い物に出て来たが、雪がちらつき始めた。スーパーの前に自転車を停める。隣の花店には、シクラメン、葉牡丹、デンドロビウム、若松、小菊、南天の寄せ植え。正月向けの花が雪に濡れているのは、寒々しいけれどいい眺めだ。線路の向こうから、籾殻を燻す煙の匂いが流れて来る。
by konohana-bunko | 2011-12-27 19:00 | 空中底辺 | Comments(0)

読書メモ 『木下利玄全歌集』 五島茂編 岩波文庫

c0073633_10572899.jpg
天理のフジケイ堂で購入。
付箋を付けた歌を転記してみます。正しい漢字表記は正字体。変換が煩雑なため新字体で打ちます。横着してすみません。

『銀』より

いもうとの小さき歩みいそがせて千代紙かひに行く月夜かな

風絶えてくもる真昼をものうげに虻なく畑のそら豆の花

真昼野に昼顔咲けりまじ\/と待つものもなき昼顔の花

踏切をよぎれば汽車の遠ひゞきレールにきこゆ夏のさみしさ

子供の頃皿に黄を溶き藍をまぜしかのみどり色にもゆる芽のあり

みちのくの一の関より四里入りし畷に日暮れ蛍火をみる

『紅玉』

街をゆき子供の傍を通る時蜜柑の香せり冬がまた来る

ふる雨の枝葉つたひてしづくする音この森にこもれり、通る

まん\/とおもくくもれる夕べの川にぶく時なくわが前にうごく

山かひのわづかの畑のさゝげ豆畑つくり人今日は来ずけり

すゝき葉のさ青長葉のしげり葉のするどに垂れて風あらずけり

戸をしめて月をあびたる家の前を人なつかしく我はとほるも

まさやかに沈透(しづ)く小石(さゞれ)のゆら\/に見え定まらず上とほる波

夕さりの光ねむごろにあかるきににはとこの芽のよく\/あをし

がら\/を振りあきぬれば振りすさびつむりを打ちて泣きし吾子はも

『一路』より

葛飾の春田の水にあたゝかき嵐渡りて小浪よる見ゆ

大和路は田圃をひろみ夕あかるしいつまでも白き梨の花かも

着脹れて歩かされゐし女の児ぱたんと倒れその儘泣くも

太子前に電車を下りて太秦の夜寒をゆけば虫すだくなり

空の色瑠璃になごめり白梅の咲きみてる梢(うれ)の枝間々々に

一むら雲日をかげしたり土白き往還のいろ目にくらくなりつ

目路さむき冬田向こうの山もとに夕陽を浴びたる大仏殿の屋根

塔の下かわけるたゝきわが傘の雫の跡を印(いん)しけるかも

澄みくろみ冬川真水の流るゝに男洗ひおとす大根(だいこ)の土を

冬山はぬくとくもあるか裸木のしゞに枝くむ下は日だまり

牡丹花は咲き定まりて静かなり花の占めたる位置のたしかさ

地の上にてわが手ふれゐるこの欅は高みの梢(うれ)へ芽ぶきつゝあり

『みかんの木』より

なづななづな切抜き模様を地に敷きてまだき春ありこゝのところに

曼珠沙華一むら燃えて秋陽つよしそこ過ぎてゐるしづかなる径



「勧工場」とか「羅苧屋」とか、久し振りに見る古いことばが出てきた。「桑の葉」も。奈良に越して来たら近所の池の傍に一本だけ大きな桑の木があった。秋には鳥が濃い色の実を食べに来ていた。数年前道路が出来る時に伐られて、今はもうない。
by konohana-bunko | 2011-12-27 10:57 | 読書雑感 | Comments(2)

敗荷

c0073633_1919424.jpg
雲間から日が差すと、小さな蓮池に空の色が映る。冬田の中の蓮池は、地面に嵌めこまれた一枚の窓だ。これほどアナーキーで、ものすさまじく、清浄な窓はない。暗く澄んだ水から枯れた茎が突き出し、焼け跡の鉄骨のように折れ曲がり、また水没してゆく。その影は、誰にも読めない楔形文字を描いている。
by konohana-bunko | 2011-12-26 18:55 | 空中底辺 | Comments(0)

『短歌とは何か 短歌の作り方と味わい方』 吉野秀雄 彌生選書

c0073633_21455446.jpg
c0073633_214697.jpg
『短歌とは何か 短歌の作り方と味わい方』 吉野秀雄 彌生書房 彌生選書 装幀=駒井哲郎。

19日、大阪へ出たついでに、出来て間なしのブックオフなんば戎橋店へ。広くて、人もたくさん。ゲームとDVDもたくさん。200円均一の単行本だけさらっと見て、この吉野秀雄を含め数冊買って帰る。
今度行ったら文庫本のところもゆっくり見よう。
by konohana-bunko | 2011-12-21 21:45 | あんな本こんな本 | Comments(2)

父の揮毫

c0073633_21142365.jpg
これもまた古い話。破り取ったカレンダーの裏にマジックで絵を描いて遊んでいたら、父が帰って来た。「何か描いて」と頼むと、父は迷わず大きな字で揮毫をしてくれた。「オドロキ モモノキ サンショノキ」と。父は真面目な顔で妙なことを言い、数少ない家族をケムに巻いては一人悦に入る癖があった。
by konohana-bunko | 2011-12-21 21:15 | 空中底辺 | Comments(0)

冬霧

c0073633_2195277.jpg
冬霧の中を電車は行く。窓外に広がるのは穭田、草紅葉。薄の穂が真っ白に膨れて揺れている。川を渡ると水処理場、植物園。葉を半ば落とした曙杉の並木、その喬木の天辺に鴉が止まっている。一本に一羽ずつ、クリスマスツリーの星のように。柔らかげなあの高い梢に、あ、また一羽飛んで来て、止まった。
by konohana-bunko | 2011-12-17 21:08 | 空中底辺 | Comments(0)

水の中を歩く

温泉郷を彷徨う夢。木造高層の大旅館、古びた商店、幅広く浅く水量の多い川。そのうち木造のアパートに迷い込む。鰻の寝床のような薄暗い廊下を延々と進む。左右の室内に布団、テレビ、新聞、片膝立てた男が。そして最後にはいつも、あかん、あかんと思いつつ、川に肩まで沈んで、水の中を歩いている。
by konohana-bunko | 2011-12-13 21:06 | 空中底辺 | Comments(0)

ジョウビタキ

c0073633_1620030.jpg
今年庭に来たジョウビタキは小振りで、お喋りな雄。「ヒ、ヒ、ヒ」と甲高い声、「カッ、カッ、カッ」という威嚇音のような声は普通だが、それ以外に、低い枝に留まり、ちゅくちゅく、きゅるきゅる、複雑なフレーズを小声でうたう。最初は遠くで別の鳥が囀っているのかと思っていた。よく見ると彼の喉が細かく震えていたのだった。ジョウビタキがあんなに賑やかな鳥とは知らなかった。他の鳥の鳴き真似をしているのだろうか?
by konohana-bunko | 2011-12-13 16:28 | 日乗 | Comments(2)

皆既月蝕

皆既月蝕を心待ちにしていた夜、雨。見えない月蝕を頭の中の画用紙に描いてみる。手袋をして夜の道に立つ私の頭上に、ビニール傘、雨粒、雲、ぐっと端折って紅い月。翌早朝、雨は止んでいた。明け初める西の空に月はあった。大きな月の、蝕で浄められたひかりが、二上山の北へ沈んでゆくのを見送った。
by konohana-bunko | 2011-12-11 21:03 | 空中底辺 | Comments(0)

読書メモ 『水牛の余波』 小池正博句集

c0073633_20532345.jpg
『水牛の余波』  小池正博句集  邑書林

水牛の余波かきわけて逢いにゆく

写真師は写真の木戸を開けていく

満身に罵言を浴びて嬉しそう

プラハまで行った靴なら親友だ

旅人がふと半島を折りたたむ

巻物の左端まで百夜通い

余呉の湖源平藤橘知りもせず

梅が咲く楕円世界の真ん中で

光背になって千年待つつもり

乱取りの最中なのに見つめあう

天空に羊を投げる羊飼い



水牛いいなあ。表紙の写真も好き。でも水牛ってまだ、すぐそばで見たことがない。竹富島に行けば見られる?



げんこつ村で原風景を盗まれる

「げんこつ」の「こ」が「ぱ」だったら……などと余計なことを考えてしまう。



俳句と川柳のどこがどう違うのか。季語のありなし、機知やうがち、そういうことだけではなくて。

狂歌って今でもそれ専門で書く人がいるのだろうか。わたしが知らないだけかもしれない。新聞や雑誌に狂歌の投稿欄がないから気が付かないだけかも。
by konohana-bunko | 2011-12-11 00:09 | 読書雑感 | Comments(2)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
プロフィールを見る
画像一覧