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極めて些細な偶然

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ヨーグルトの蓋を開けた時、蓋の裏側が全く汚れていなかったり。掌にざらっと出したサプリメントの粒が、ちょうど飲みたい数だったり。日常の中、極めて些細な偶然に出会った時(お)と思う。偶然の意味の方には意識を向けず、ただその出来事を見る。そして、(お)とこころが動く、その動きを楽しむ。
by konohana-bunko | 2012-03-27 11:15 | 空中底辺 | Comments(2)

高橋みずほ 『しろうるり』より

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『しろうるり』より、好きな歌を引用。

靴脱いで裏ながめてる少年と椅子に腰掛けバスを待つ

雨の歩道のひとつ青栗蹴りてみる毬の先にまわりて止まる

なにかわからぬ虫を手の平で鵜chわからぬ形のままゆきぬ

逃げ惑うおたまじゃくしの猛しさに頭のゆれも尾のゆれのなか

あめんぼう水面(みなも)の底に四隅おさえた影すべらせて

黄の傘まわり緑のゆれてたたみつつ戸口につぼむ

立ち上がる波に若布も伸びあがり巻かれて走る砂の浜

思い煩うことも土平らかにして終わらんとす家の跡

カラコロと下駄の坂道おちてゆく西日のなかにカラコロ光

家影が旧道沿いに落ちるころ竿竹売りがゆるゆるとゆく

玄関の戸を開け放ち 布を裂く さき目におどる光の粒子

うさぎの耳が風をつかんで立つ日暮れ草のしずくを嗅ぎわけながら

殻を食むたびにつむじがゆれてゆったりと秋の鹿

牛と牛 小突き合う角つなげられ版画の黒の浮き立つ形

ずるずると屋根落ち軒にたれるゆきはるのしずくとなるまで の

夕暮れの幹をつかむ蝉の殻 わ れ て 声の立つ

生きている人の幅に開きいて椅子はひそかな広がりをもつ

生きてきた木目の幅をみせながらほっとりと椅子が置かれて


歌集『しろうるり』  高橋みずほ  装丁=間村俊一  邑書林(2008)



字足らずはもちろん、大きな印象のひとつ。それについで気付いたのは、一首の前半と後半で主語が変わる(ように読める)歌が時折見受けられること。それは、歌会だと「ねじれている」などと指摘されがちなところなのだけれど、集として読んでいると気にならない。むしろ、ちょっと楽しかったりする。公園の遊具、曲がりくねったトンネルをくぐり抜けて、(あれっ、こっちに出てきたのか)と思う瞬間の、あの妙な気分に似ている。

写真はあわじ花さじきにて。しばらく島の写真、続きます。
by konohana-bunko | 2012-03-26 19:03 | Comments(0)

雨の夜

雨の夜、大和郡山へ。柳通りを、車を避け電柱を避け、傘を傾けながら歩く。和菓子屋も碁会所も早々と灯を消して、仕舞た屋の中に溶け込んでしまった。外堀公園のあたりで、靴に水が浸みて来る。元気を出すため郡山の町名を反芻しながら進む。塩町、魚町、茶町、綿町、藺町。豆腐町、紺屋町、雑穀町。
by konohana-bunko | 2012-03-24 11:12 | 空中底辺 | Comments(2)

春の嵐

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春の嵐。自転車が前に進まない。強い風に揺れているのは、電線。洗濯物。自転車のサドルに被せたビニール袋。墓地の蛇口にぶら下がった薬罐。川の水面。橋を渡るポメラニアンの毛。蕾の膨らんだ桜の枝。桜並木に桜まつりの提灯が飾り付けられている。試験点灯の光が青白い。今年からLED電球なのか。

写真、伊弉諾神宮にて。
by konohana-bunko | 2012-03-24 11:04 | 空中底辺 | Comments(0)

「短歌往来」より、宮崎信義のうた

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「短歌往来」2012年3月号、「宮崎信義のうた50首抄 関アツ子選」より、宮崎信義の歌を抜き書き。



昨日まで迫撃砲(はう)を運んでゐた傷馬(うま) ぐつぐつ肉が煮え泡だつ汁とともにのみこむ  『夏雲』

これが給料―と渡した妻のひび割れた手がいつまでもやきついている  『交差路』

ゆすぶってやれゆすぶってやれ 木だって人間だって青い風が好きだ  『急行列車』

ひろい豊かな水量だ満たされぬねがいのままに川を見ている  『和風土』

家のことはほったらかしにしてウタのことばかりして―というていたそうな  『梅花忌』

静になった病室に死んだばかりの妻と残されるほの白い谷底だ

今朝脱いだパジャマが棹にゆれているひょうひょうと街を見ている  『太陽はいま』

友の五十回忌が私の五十回忌でもあるような読経がつづく  『地に長く』

山が描(か)けるか風や水が描(えが)けるかあと一日で春になる  『千年』

九十二のじいさんがスーパーへおかずを買いに出る雨が降ってきた  『山や野や川』

ここしばらくいのちが居坐っている天気予報に似ているな  『いのち』



写真は淡路島にて。
by konohana-bunko | 2012-03-22 19:11 | 読書雑感 | Comments(0)

鮮魚売場

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近所のスーパーの鮮魚売場。品揃えが凝っている。大鋸屑の中でクルマエビがごそごそしていたり、昆虫ケースに入れたサワガニが売られていたり。一昨日行ったら水の入った硝子の壜が飾ってあった。何かと思ったらPOPに「クリオネ」の文字が。壜の底でほんまにクリオネが動いていた。値札はなかった。
by konohana-bunko | 2012-03-18 11:01 | 空中底辺 | Comments(0)

松村由利子 『鳥女』より 

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『鳥女』より、好きな歌を引用。

みつみつと過去を抱きて太る秋くりのき栗の木なにも語るな

うす日差す水沼(みぬま)に憩うどの鳥も神を見るごと風上を向く

透きとおる鳥の魂あつめられ冬天かくも深き青なり

くりかえし繰り返す朝わたくしの死後も誰かが電車に駆け込む

地球はもうダメだと子ども言い放ち公文の算数解きにかかりぬ

女の子産まずに終わる生なるかどこか硬さの残るわが体

ああこれは本当のこと新聞の端から端まで貫く見出し

キッチンに光あふるるこの朝もどこかで女が殴られている

第三の性ある世界バクテリアのやや複雑な恋を思えり

キリギリス・イギリス・シマリス並び居て逆引辞典の楽しき夕べ

ガラス器の曇り見つけるふるさとは老いたる母に言わぬこと多し

結婚もシャッターチャンスも運次第 明日には明日の新聞が出る

IT化進む職場に3Bの鉛筆ありて木の香放てり

毎晩のように仕事の夢を見ていやだいやだと一葉も泣く

女らは鳥になりたしぬめぬめとやわきものもう産みたくなくて


歌集『鳥女』 松村由利子 本阿弥書店(2005)
by konohana-bunko | 2012-03-16 19:38 | 読書雑感 | Comments(3)

梅の花は

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光は春、風は冬。自転車を漕ぐと耳朶が痛い。あちこちで梅が咲いている。畑の真ん中、郵便局、書道教室、一つ一つの花を確かめながら走る。水路の傍らにある大きな紅梅は、もう散りかけ。薄紅の小さな花片が、水路の乏しい水に浮かび、ゆるゆると流れてゆく。梅の花はいつも淡い。咲く時も、散る時も。
by konohana-bunko | 2012-03-12 19:00 | 空中底辺 | Comments(0)

脱ぎ捨てる

三月の雨の朝。冷たいが、寒くない。猫がぶるっと身震いすると、抜け毛が床にふわりと散る。駅へ向かう道の途中、昨日と同じ場所に手袋の片方が落ちている。次の角には昨日はなかった耳当てが落ちている。そして改札口に靴の片方が落ちている。みんな何か脱ぎ捨てたがっているのだろうか。春の気配に。
by konohana-bunko | 2012-03-05 18:59 | 空中底辺 | Comments(0)

抱っこが苦手な猫 animal

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「はっ!しまった、捕まったでち!」
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「早く逃げねばっ」
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「早く……」
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「う、ぐぐ」
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「もうダメでち……」
by konohana-bunko | 2012-03-04 22:45 | 猫是好日 | Comments(2)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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