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湿り空

午前五時、窓を開ける。外気は水のように重い。蠟梅の葉に昨夜の雨が残り、緑を帯びて透けている。空は、晴れとも曇りともつかぬ、曖昧な色。この空、ウェザーリポートで何と表現したら伝わるだろう?〈奈良県の天気 西の風 晴れ 朝のうち 湿り〉そう、湿り空。日が高くなるまでの、束の間の空だ。
by konohana-bunko | 2012-04-27 19:07 | 空中底辺 | Comments(0)

『魚雨』より

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歌集『魚雨』(うをあめふる) 片山貞美 (不識書院 1998)より、以下引用。



人の吹く口笛に似て鳴く鳥に真似て拙(つたな)く鳴く鳥のゐる

つい昔この堂屋根の葺き替へに大判百枚棟(むね)より出づと

人集(つど)ひ楽しき歌かひとりにて寂しき歌かひとりなるがよし

声ありて見れば電柱を降りくるが穿(は)く長靴を釘にさばきて

覗ければ金網あらく鉄道の萱(かや)枯れ伏すに油菜咲けり

構内に松の群れたるいづれにも菰(こも)除きありて春の雨降る

自転車を押しくる真面目(まじめ)なる顔に見れば後輪のパンクしたりし

わが前を行きてペダルを踏みに踏む目まぐろしさに離れつつゆく

置去りにせる自転車の数無きが片寄せられてわが出だしもならず

櫟原(くぬぎはら)梢平らにながめしが通り抜けたり坂くだりきて

小兵(こひやう)にてまめならざりし二等兵奈良馬吉君すこやかにありや

停車せるペリカン便の幌(ほろ)の内に荷をおろすなる音のしてをり

此(こ)も縁(えにし)ありしひとつにほととぎす薄色さびし秋の日なかに

懲りずまに山路をきたり脱ぎ捨てある軍手を見れば心なごむに

二もとの槓杆(こうかん)を握りゆすぶれば生(なま)コンクリート切るるまで落つ

電柱を踏まへて腰を綱にかけ俯く見ればペンチを使ふ

落ちくだる全き瀧に裾虹(すそにじ)のなびきて久し我は立ち去る

差しかはす桜の枝の咲き満てば雉鳩が踏む花びらが降る

走りしは鳥の影にて秋の日の股(もも)にあたたかくペダル踏みゆく

曳き出すに人のなやめる駐輪の間を通り広場に降りぬ

出でむかと見るにつぶつぶ泡ばかり泛きては散らひ亀は出でこず

蓮の花おもかげにのみたちながら蛙鳴くなり蓮の葉陰に

炬燵板持出し四脚(しきゃく)差込むに灯ともしもみつ赤くともりつ

新しき眼鏡用ひてまなかひに活気を感じ裏通り来ぬ

欲りするもあながちなれば水にただ沈みたるさへうまし豆腐は

淬(にら)ぎたる無反(むぞり)のたぐひ好きこのむ人はとあらば蓋ししたたか

みなぎりて草ひたしつつ流れゆく彼処(かしこ)かがやき躍りに躍る

風に乗る声は競技を呼びたてて人影乏し照る秋の日に

燃えくづれたる骨およそ納むれば余れる屑は掃きよせて入る

好まねば聞きて忘るる花の名のまた咲きいでてながめやるのみ

人の筆刻(ほ)りて楽しきしるべぞと此処にもすわる山の辺の道

見て通る塩を盛り銭(ぜに)の散らばれる巌(いはほ)もあるは古きゆゑよし

雑巾のごとくも猫の骸(むくろ)とぞ泣菫(きふきん)昭和はじめの文に

はからずき東大寺山堺四至図(さんかいしいづ)の墨かするるもゆかしくぞ見る

兎も角もあらねど蕪村また大雅思ひ出づるは椨(たぶ)のそよぐに

踏みぬべく反(そ)りの大いなる橋にして人の登るにまこと大いなり
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by konohana-bunko | 2012-04-25 09:50 | 読書雑感 | Comments(2)

アジュガ

アジュガという名は、タキイ種苗のカタログで覚えた。キランソウという和名は長く知らなかった。春半ば、地の面近くに青紫の塔を築く、地獄の釜の蓋。古家の庭や墓地の日溜まりに群れ咲くのを見ていると、花蔭に小さな王国があるような気がしてくる。葉陰の廻廊を、六本脚の僧侶達が忙しく巡っている。
by konohana-bunko | 2012-04-24 19:12 | 空中底辺 | Comments(0)

春の椅子

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春の椅子は、猫のもの
by konohana-bunko | 2012-04-24 06:43 | 猫是好日 | Comments(2)

男子の自転車

自宅は集合住宅の一階。出入りがはげしいので、自転車は自転車置き場ではなく自宅庭の前に停めている。すると他所の家に遊びに来た男子がうちの前に次々と自転車を放置するようになり、気付いた時には自転車だらけで庭から出られない状況に。ぬう男子共め。春休みは終わったが、給食はまだ始まらない。
by konohana-bunko | 2012-04-14 19:18 | 空中底辺 | Comments(0)

呼び起こすもの

こころの中の歌を呼び起こすもの。魚の化石。サーカスのポスター。団地の風呂場の窓。展望台の錆びた手摺の匂い。八重咲きの椿。動物園のペンギン。澱粉工場の水蒸気。夕日の差す土蔵の西壁。そら豆の莢の内側のふわふわ。踏絵。夜の鏡。真っ黒な車が走り去る時、巻き上げられまた散り落ちる桜の花片。
by konohana-bunko | 2012-04-14 19:16 | 空中底辺 | Comments(0)

春のばかマシン

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「ばかマシン」についてはこちらをご参照下さい。→ 『青空の方法』 宮沢章夫
by konohana-bunko | 2012-04-12 16:30 | 日乗 | Comments(0)

『随想集 甦る記憶』より

串田孫一『随想集 甦る記憶』(牧羊社)〈1979)より、以下引用。

〈牛に近寄ってその大きな眼を見ると、涙を浮べている。睫毛の間からこぼれそうになっているのもいた。その本当の理由は私には分からないが、牛の、感謝に支えられた優しく悲しい思考が、あの巻毛の額の中を駆け巡るのではなかろうか。それとも、自分たちの知らない先祖の牛たちの姿が、瞼に甦って、その余りの逞しさに見蕩れているうちに、どうしてだか涙が滲み出て来たのだろうか。〉(p14「天上の鐘」より)
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淡路島で出会った子牛。牛って額につむじがあるんだなあ。
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by konohana-bunko | 2012-04-11 12:42 | 読書雑感 | Comments(0)

春の

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春の昼餉
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春の夕暮
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小望月
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鏡の中にも春の夜が来る
by konohana-bunko | 2012-04-06 20:22 | 日乗 | Comments(0)

春の水たまり

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四月二日、晴。春休みの小学生が公園で泥水を作って遊んでいる。靴の中まで泥だらけ。ちょっと暖かくなったと思ったら、こどもは容赦ない。雨が降るとここの砂場には大きな水溜まりができる。その中で服を着たまま泳いでいた男子から「やあ、母ちゃん!」と呼び掛けられたことがあった。十年前のこと。
by konohana-bunko | 2012-04-02 19:19 | 空中底辺 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
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