タグ:短歌 ( 216 ) タグの人気記事

現代短歌そのこころみ 関川夏央

c0073633_11284079.jpg
先月、『現代短歌 そのこころみ』 関川夏央(集英社文庫)をようやく読了。この本から、引用歌の孫引きになるが、自分のために書き写してみる。



沈黙のわれに見よとぞ百房の黒き葡萄に雨ふりそそぐ  斎藤茂吉

春のめだか雛の足あと山椒の実それらのものの一つかわが子  中城ふみ子

妻を得てユトレヒトに今は住むといふユトレヒトにも雨降るらむか  大西民子

悦びの如し冬藻に巻かれつつ牡蠣(ぼれい)は刺(とげ)を養ひをらむ  中城ふみ子

野に風のわかれのやうな愛終えてわれら佇つとき響(な)るまんじゆしやげ  小野興二郎

水風呂にみずみちたればとっぷりとくれてうたえるただ麦畑  村木道彦

奔馬ひとつ冬のかすみの奥に消ゆわれのみが累々と子を持てりけり  葛原妙子

あの夏の数かぎりなきそしてまたたった一つの表情をせよ  小野茂樹

目の前のそら明らめるさみしさや一房の藤を母もちたもう  浜田到

硝子街に睫毛睫毛のまばたけりこのままにして霜は降りこよ  浜田到

亡き母よ嵐のきたる前にしてすみ透りゆくこの葉は何  浜田到

ほらあれは火祭りの炎ふるさとに残った秋をみな焼くための  永井陽子

北鎌倉橋ある川に橋ありて橋あれば橋 橋なくば川  石原吉郎

今生の水面を垂りて相逢はず藤は他界を逆向きて立つ  石原吉郎

けふのみの武蔵国原手を振れば八月(はちげつ)の雲の涌きやまずけり  石原吉郎

家々に釘の芽しずみ神御衣(かむみそ)のごとくひろがる桜花かな  大瀧和子

佐野朋子のばかころしたろかと思ひつつ教室へ行きしが佐野朋子をらず  小池光

水滴のひとつひとつが月の檻レインコートの形を抱けば  穂村弘

暗い燃料(フエル)タンクのなかに虹を生み虹をころしてゆれるガソリン  穂村弘

夕闇の受話器受け(クレイドル)ふいに歯のごとし人差し指をしずかに置けば  穂村弘



写真は和歌山にて。ヨシのいとこみたいな植物は、ダンチク(暖竹)。
by konohana-bunko | 2012-09-26 11:38 | 読書雑感 | Comments(0)

9月22日

こしらえたもの 肉じゃが 次から味噌汁はもうちょっと小さい鍋で作ろうと思う。
読んでいる本 『オデオン通り』 西原理恵子『この世でいちばん大事な「カネ」の話』

ここ数日こころにかかっている歌。

・苦しくも降り来る雨か三輪の崎狭野の渡りに家もあらなくに  長忌寸奥麻呂
by konohana-bunko | 2012-09-22 23:08 | 日乗 | Comments(0)

夜になるとこころが蛾になる。眠るまでの間、蛾は自由に飛び回る。今日一日に見た何かしらよきものが放つ、淡い光の周囲を巡るのだ。好きなだけ飛ぶに任せておくと、たまにくたびれて、落ちて来ることがある。それを拾ったら、小さく解して、歌にする。気が済むまで飛んだ蛾は、ぼろぼろで、きれいだ。
by konohana-bunko | 2012-09-18 16:27 | 空中底辺 | Comments(0)

9月15日

こしらえたもの 粉ふき芋の梅マヨ胡麻和え

読んでいる本 「日月」108号 『オデオン通り』
by konohana-bunko | 2012-09-15 19:00 | 日乗 | Comments(0)

読書の記録 葉月

c0073633_19164266.jpg
日が経つのが早いなあ。

『汀暮抄』(歌集) 大辻隆弘 砂子屋書房
『仏教が好き!』 河合隼雄×中沢新一 朝日新聞社
『こどもたんか』(歌集) 本多稜 角川文芸出版
『短歌実作の部屋』 玉城徹 短歌新聞社
『私の手が語る』 本多宗一郎 講談社文庫
『現代短歌 そのこころみ』 関川夏央
『うめ版 新明解国語辞典×梅佳代』 梅佳代 三省堂
『「やさしい」って、どういうこと?』 アルボムッレ・スマナサーラ 宝島社
『おやすみ、アンニパンニ!』(絵本) 文と絵:マレーク・ベロニカ 訳:羽仁協子 風濤社

『こどもたんか』について、「うた新聞」8月号に書かせていただきました。

写真、9月2日の月の出。
by konohana-bunko | 2012-09-09 19:09 | 読書雑感 | Comments(2)

『王のテラス』 寺島博子

寺島博子歌集『王のテラス』(ながらみ書房)より、以下引用。

c0073633_20255518.jpg
赤き実に帰天のこころ黒き実に堕天のこころふたつ寄りそふ

相呼ぶといふやさしみを秋は見すひかりが風を風が記憶を

また来いと言ふ声を風に聞く耳に苦しめられむこの先長く

そのむかし身罷りたるもゆめになほ騒ぐもうぢき春ぢや春ぢやと

落雁をのせれば舌に一羽二羽とろけてゆくも音しめやかに

みづうすく張られたる空に水紋を広げながらにさへづる一羽

白き象を普賢菩薩に拝借しひとまはりせぬ初秋の街を

ワンピースの背中を割りてあらはるる翅をもたざるむすめのからだ

何ものの命かわれに添ふとさへ思へてならぬ日暮れの風に

こほろぎの一匹を胸の奥に飼ひときに畳に出だして鳴かす

なにがしかの覚悟そなはる出刃をもて寒の厨に魚を捌くに
by konohana-bunko | 2012-09-07 20:25 | 読書雑感 | Comments(0)

『汀暮抄』 大辻隆弘

c0073633_22152416.jpg
大辻隆弘第七歌集『汀暮抄』より、以下引用。



人あらぬ屋上階にのぼりきて銀杏の錐の全貌を見る

窓の辺に逆さに立てむとするときに清く鳴りたる牛乳の壜

つくづくと歌の読めない女かなびらびらと赤き付箋を貼りて

漂転暮帰愁ふといへる詩句ひとつわが同年の杜甫の嘆きに

ハンガーを左にずらし干すシャツのひらめきのなかに妻の朝あり

名古屋から那覇ですといふ声がして甘やかにまどろみが誘ふ

みづあさぎいろの曇りが夏暁の南の窓を占めゐたるのみ

ひとつかみほどの太さの夕かげが角度を帯びて部屋をつらぬく

舟板に鵞と豚を載せあやふくも棹をあやつる画中の一人

文政の四年出島に渡来せし駱駝の雌雄が見あげたる空

春の夜にこころやさしく思ふかな種子郵便の割引なども

東京に往反をせし初夏の二日がほどに麦は色づく

夕空の高きに吹かれゐる欅あかるさはたましひのはつなつ

ファックスが吐くあたたかき紙の上に玉城徹のけさの訃を知る

ニーチェにはあらずと告げて出典を糺したまひきわれの批評に

ちりぢりになりたる「うた」の門弟のそのひとりなる女の泣くこゑ

十代の玉城徹の歌を読む日脚ののぶる部屋に坐りて

袋綴ぢの「多摩」のページをおそるおそる刃先に裂きて読み進めたり

小春日のひかりを裏返すやうに白木の椅子にニスを塗るひと



大辻さんのお名前の辻の字、正しくは点がひとつの「辶」です。

写真は興福寺にて。
by konohana-bunko | 2012-08-14 22:15 | 読書雑感 | Comments(0)

読書の記録 皐月・水無月

c0073633_21593328.jpg
『はなのすきなうし』(絵本) マンロー・リーフ作 ロバート・ローソン絵 光吉夏弥訳 岩波書店 岩波の子どもの本
『おばさんのスプーン』(絵本) 神沢利子作 富山妙子絵 福音館書店
『こんとあき』(絵本) 林明子 福音館書店
『論語』 桑原武夫 ちくま文庫
『坑夫トッチルは電気をつけた』(詩集) 荒川洋治 彼方社
『恋の万葉・東歌』 高橋順子 書肆山田
『西田幾多郎歌集』 上田薫編 岩波文庫
『ミドリツキノワ』(歌集) やすたけまり 短歌研究社
『なぜ人生は、うまくいかないのか?』 アルボムッレ・スマナサーラ 宝島社
『君に成功を贈る』 中村天風述 日本経営合理化協会出版局
『戦国の女たち』 司馬遼太郎 PHP文庫
『マコチン』 灰谷健次郎 長新太 あかね書房
『霊の書 ―大いなる世界に』(上・下) アラン・カーデック編 桑原啓善訳 潮文社
『海外詩文庫16 ペソア詩集』 フェルナンド・ペソア 思潮社
『世間知ラズ』(詩集) 谷川俊太郎 思潮社
『富と宇宙と心の法則』 ディーパック・チョプラ 住友進訳 サンマーク出版
『はなのほん』 かわしまよう子 アノニマ・スタジオ

久し振りに読んだ司馬遼太郎はやっぱり面白かった。
『論語』も、思ったより退屈しなかった。よかった。

ノートをめくるとやたらたくさんタイトルが並んでいるので、(こんなようけ本読んどったっけ?)と思ったら、単に5月の末に記録を〆るのを忘れていただけだった。
記録をするのを忘れることはあっても、毎日何かしら本を読むのは忘れていないので、これはこれでよしとする。そして、読んだそばから中身を忘れる。

写真、これがシャカシャカ祭の藁の蛇。
by konohana-bunko | 2012-07-05 22:00 | 読書雑感 | Comments(0)

やすたけまり歌集 『ミドリツキノワ』

c0073633_20532799.jpg
やすたけまり歌集 『ミドリツキノワ』 (短歌研究社)より、以下引用。

山木蓮うたい出せその手をうえにむすんだら春ひらいたら風

ジュズダマの穂をひきぬけばひとすじの風で河原と空がつながる

ながいこと水底にいたものばかり博物館でわたしを囲む

ならんでる黒いものより怖かった「かもじや」という看板の文字

なつかしい野原はみんなとおくから来たものたちでできていました

眠れるのですかあかるいところでも卵のなかの鳥のこころは

干潟再生実験中の水底に貝のかたちでねむるものたち

おもいでにあるレコードの溝ぜんぶつないだよりも遠くまで来た

熊はきらきらとみている乾燥剤青くしてゆくレンジのうなり

たまごかけごはんぐるぐるまぜている卵うまない熊とわたしで

あした産む卵を持ったままで飛ぶ ツバメは川面すれすれにとぶ

飴色に蛹はかわる まっしぐらに忘れる途中とわかる 見とれる



歌集は、新しければ新しいほど、素直に読めない。うちひしがれたり、違和感にひっかかったり、何でこんな風にうたうねん!と机を叩きそうになったり。
それは歌集のせいではなく、あくまでもわたしの内面の問題なのだが。

『ミドリツキノワ』は水を飲むように読めてうれしかった。
by konohana-bunko | 2012-06-21 20:56 | 読書雑感 | Comments(0)

Pocket かばん新人特集号vol.4より

c0073633_22402710.jpg
2005年発行の「Pocket かばん新人特集号 vol.4」を引っ張り出してぱらぱら読む。ちょっとこころに引っ掛かったところを以下引用。

〈誰に遠慮することはない、好きなことを好きなように作ればいいはずなのに、気がついてみれば、私たちは歌を作る際に多くのルールを自分で設けていないだろうか。短歌らしい表現をしなければならない、こういう歌を作ったら人格を疑われる、できれば才能があると思ってもらいたいし、賞も獲らなければならない、私たちはそういうルールを自分で設けている。そしてそのルールは直截さをひどく減じさせる。〉 
(中村要作品「20+10」に寄せた評「簡単なカレイドスコープ」西崎憲 より)

〈まず、短歌はひとつの詩形であって、その形を守って表現するのが絶対であるということ。字足らずを、手法として故意に使うことはあるけれど、不用意な破調は回避しなくてはならない。短歌はリズムであって、リズムを外れたら短歌ではないからである。自分で気づかない場合は、だれか周囲の人に指摘してもらって、改作してから発表するのがいいと思う。
次に、短歌は相手に内容を分からせることが絶対であるということ。歌の一部の語句だけを好き勝手に解釈をして褒めあう人がいるけれど、そんな甘さにだまされてはいけない。〉 
(伊藤信彦作品「再生~起承転結~」に寄せた評「もっとリズムを大切に、もっと読者に親切に」大松達知 より)

歌を書き始めた頃、先生にいつもこれと同じことを言われていたなあと思いながら読んだ。今は言われないかといったらそうではなくて、やはり同じことを、折に触れて、言われている。大事なことだから。
by konohana-bunko | 2012-06-11 18:22 | 読書雑感 | Comments(0)

何もないところを空といふのならわたしは洗ふ虹が顕つまで


by このはな文庫 十谷あとり
プロフィールを見る
画像一覧